ONE PIECE [SMS] | ナノ

地下室での報告会 (1/2)



「カク、ルッチ」とカリファに呼び止められた日の夜、おれたちはブルーノの酒場に集合した。
"CLOSE"の看板を下げても入って来る輩が居なくもないことから全てのカーテンを引き、灯りを消して...秘密の地下倉庫へと移動する。ワインを寝かせるための貯蔵庫の対面に位置する狭い部屋は、ブルーノの立ち位置にある分厚い鉄板を持ち上げなければ進めない。つまり相当な力を持つ者しか入れない仕組みになっていた。

「ライラ・アルセストの件よ。これが彼女の履歴書...結論だけ言うと偽装されてるわ」
「まァ、そうくると思ったわい」
「住所の家はあったわ。今は無人。持ち主は随分前に死去、家主は一人娘だけどライラであっても"ライラ"ではない」

軍が所持する民間人のリストと一枚の写真、それを広げてカリファは話を続けた。

「本物のライラは家を残して別の地に移ってるみたい」
「......似ても似つかぬ写真じゃ」
「未処理の手配書も見たけど彼女のものはないわ。賞金稼ぎの類でもない。けど、」
「......けど、何だ」

海軍に所属する女性のリスト。スッと指差された場所におれたちは注目した。

「海軍本部にライラ・アルセストという名の少将がいるわ。詳細は不明。長官にデータを送るよう手配してる」
「穏やかではないな」
「けどコレは本物の可能性は高いかのう」
「私もそう思うわ」

ガレーラで起きた一件を見たおれらは女がそうである可能性が高いことを知っているが、ブルーノは納得出来ないらしい。この酒場で見る限りではひ弱な女をとにかく演じてるから仕方ないと言えば仕方ないことだが。
もし、女が本物でなかった場合、いよいよ捕らえて目的を吐かせる必要があり、今度はおれだけでなくこのメンバーで全力を尽くす必要がある。その手間を考えるならばいっそ女が本物であってくれた方が楽でいいのかもしれない。

「長官からの報告は?」
「あの後すぐに手配したのよ。いくらセクハラでもじきに届くはず」

部屋の隅に置いた電伝虫を見たがまだ動かない。
戦力外かつ地位や名誉と無意味なものを好む無能な男にたまに仕事を振ったところで迅速さはない。アレが長官でなければ真っ先に殺しても構わないと思っているのはおれだけだろうか。所詮、七光りでしかない哀れな男には従うフリをして掌の上で転がしておけばいい。

「しかし、ルッチが仕留め損なう女にゃ見えなかったがな」
「それはおぬしがあの場におらんかったからそう言えるのじゃ。あの時は...拘束解除から発砲まで数秒しか使わんかった」
「しかも弾道は正確。一発は威嚇だったけど残り二発は相手の持ち手に当てた」
「銃口を向けられた際の護身も理屈では何とでも言えるんじゃが実行は難しい」

そう、護身術など実戦で使える人間など極僅かだ。
練習では出来たのに、と嘆くバカをよく目にして来たがそれはあくまで練習。それを何度も重ねて身に付いた頃にようやく自然と体が動くもの。いくら頭の中で考えたところで体がついてくはずがない。だから、彼女はおかしい、誤魔化せない。

「......そいつァ、生身なのか?」

悪魔の実の能力者である可能性をブルーノは問う。
ある者は莫大な金を得るために、ある者は人間離れした能力を得るために誰もが血眼になって探す悪魔の実のシリーズ。ただ強いというだけでは所詮越えられないものを埋めるべく食べる者も少なくない。が、しかし能力は使わなければ知られずして終わるのだが...

「能力者の可能性は高いだろう」
「ほう...ルッチ、お前さん見たのかい?」
「いいや」

女は、おれを目前に一度たりともそれを発揮したことはない、が、初めて見た時の妙な波動を忘れちゃいない。
遠くから射抜くような視線を送ってた。それはおそらく何かしらの能力だと思うが、何故それをおれが察知出来たのかは分からない。あの場にはおれ以外にカクもカリファも居たが何も気付かなかったようだ。

「勘か...何処までアテにあるかのう」
「少なくとも確信に近いがな」

そう、あれは間違いなく...能力者の気配。

と、その時だった。片隅の電伝虫が鳴った。あのしがない長官専用のものだ。
カリファがゆっくりとそれに近づいて送られて来るデータを待った。海軍本部にいるライラ・アルセストという名の少将のデータ...それが一致したならばおれらもまた出方を変えなければならない。そもそもCP9は海軍管轄の組織だから。

「どうじゃカリファ」

手に取られた資料。カリファはその場でその資料、添付された写真をおれらに見せた。

「......ライラよ」


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