特別だとしても (1/5)
「ライラ准将、グラマン買って来い」
「.........は?何を、」
「だからグラマン買って来いって。ついでの仕事でいいじゃない」
「.........はあ」
出発前、急に呼び付けられたと思えば仕事のことじゃなくてめちゃくちゃ私用だったことに溜め息が出た。
私が本部からシャボンディ諸島へ行くのは別に観光のためでも小旅行のためでもない。あくまで『シャボンディ諸島警備強化のための部隊配置箇所の確認と補強箇所の調査』という仕事のために行くのであって、そこでわざわざグラマンを買って行くというのはどうかと思う。
一緒に仕事をする仲間たちの私に対する不信感が募りに募ったらどうしてくれるんだ。ただでさえ"いいよな女は"みたいな目で見られてそういう風に考える人も少なからずともいるのに。
と、クザンに言ってやりたいのは山々だけど...何だかんだでこの人は私の上司で私を軍に引っ張ってくれた人。ある島で孤児になった私の身元引受人で、長い付き合いのある兄のような人だけど...ここでは分別をわきまえたい。
「申し訳ありません。それはお受け出来ません」
「えーおれとライラの仲なのに随分と冷たいじゃないの」
「......そんなことを言う前に大将であるご自身の身をわきまえて頂きたい」
「あらら、冷たい子になっちまったなァライラ。昔は好きな服からオモチャから買ってやってオムツとか取り換え――...」
「みぎゃあ!それは此処で話すことじゃないです!!」
分別をわきまえたい、とは思っても...私にはそれが出来るだけの強みがない。
「ライラ准将、グラマン買って来い」
この人を前に、私は項垂れるしかなかった。
[ 戻る / 付箋 ]