ONE PIECE [SMS] | ナノ

互いの目前詮索 (5/5)



翌朝、目を覚ませば向かいにはまだ女は居た。
近付いてみたが気配に反応するわけでもなく静かに堕ちたまま、人のベッドの上、シーツを我が物のように使い包まって寝ている。
時間は...まだ表向きの方で準備をしなくてはいけない時間ではない。が、尋問の時間は必要で...昨日と同じように女の体を揺すった。触れた瞬間、ぴくっと体は震え、何とも言えない寝言を言いながらゆっくりと目を開けた女は確実に二日酔い、虚ろな目をしていた。

「起きたか」
「.........気持ち、悪い」

まだ夢と現実の狭間に居るのか。現状を把握出来てない様子の女は、此処が何処なのか目の前に居るのが誰なのかも見ることが出来ていないらしく、ただゆっくりと体を起こして頭を抱えることしか出来ていない。しかも、その体勢から動かなくなったところを見ると...酷いのだろう。

「酔い止めだ、飲んどけ」
「.........はい」

敵に塩を送るつもりはないが、たまたま前にパウリーが置いて帰った利くとも分からん酔い止めが目に入ったから女に渡す。ふらふらしながら酔い止めを飲んで、「有難う」と告げて空びんをおれに渡した時、どうやら状況に気付いたらしい。此処が少なからずとも自分の部屋でないこと、目の前におれがいることからおれの部屋であること、一応だが寝床を提供してもらって介抱されたこと...呆然としながらも少しずつ把握しているようだった。

「.........おはよう、ござい、ます」
「ああ」
「.........あの、お世話になりました、」
「で?」
「.........と、言います、と?」

前に何度も問うた、質問に答えればいい。
少なくとも二度は聞いたが答えはなかった。今度はもう、逃げることは出来ない。

「お前は何者だ。何故ガレーラまで乗り込んでおれたちを探る」
「.........」
「殺されないと思ったら大間違いだぞ」
「.........かもしれません。ですが、」
「言わない、か――...」

ならば殺されても文句はないだろう。
安定しないベッドの上、未だ起きた状態のままでいた女はシーツを払って立ち上がろうとしたがすでに遅い。最初から立ち上がっていたおれはそれよりも先に行動が出来た。女の両腕を捕らえることなど安易、未だ二日酔いの治らない女はバランスを崩してベッドに沈んだ。

「お前をこの場で殺すのは容易いが得策とは言えない」
「.........」
「事情を話せば命だけは残してやる。命は惜しいだろう?」

そう言えば、大体の輩は進んで事情を話すことが多い。勿論、それが正解であり...間違いの時もあるんだが。

「惜しい、だから助けてくれ、何でも話す......と言うと思いますか?」
「.........その強さと度胸は認めよう。藻屑となれ」

今度は間違いなく殺せる、潔いが何ともあっけない。
沈んだベッドの中で目を閉じ、抗う姿勢すら見せない女は死を覚悟したらしい。俺もまたようやく全てにカタがつく喜びとベッドが血で染まる楽しみに少なからずとも心を躍らせながら手を上げた。が、


「おいルッチ!ちょっくら仕事、で――...」
「.........え?」


「ハレンチハレンチハレンチハレンチ!!ルッチてめェ何してやがる!!」
「う、ちょっ、パウリー、しょくちょ、私、頭、痛い」
「オイ、大丈夫か?無事か?どうなんだ?」
「ちょっ、揺らさな、気持ち、悪、」
「気持ち悪い!?待てお前それつわりか!?」
「違、ごめ、もう、無理――...」


ベッドが血に染まるどころか、大変なことになった。


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