「"国の犯罪者"か...事情は知らないが濡れ衣とかじゃないのか?」
「.........いいえ。私は国王の意に背いた。異議を唱えた。それが罪となっただけのこと」
「そう、か...」
意に背いただけ、異論を唱えただけ...
聞く耳を持たない絶対王はその権力を以ってそれを罪とし、それらを罪人として処罰するのか。酷い話だ。
俺もまた"罪人"だ。それは自分では罪だとは一度も思ったことはないがそれでも"罪人"だ。
軍が追う"海賊"であり、あの場所から逃げ出した"奴隷"...何となく、その表現出来ない気持ちが分からなくもない。
悪いことはしたつもりはねえ、けど、罪。
むしろ、何がどう悪いのか説明されても理解出来ない罪を背負わされてる。
「.........俺に権利はねえが、アンタも来るか?」
「え?」
俺の口から零れた言葉は...きっと同情だ。
いいのか悪いのか、こんな感情を彼女に向けて...それでも言わずにいられないのは俺が辛いからだ。
どんなに強くとも心は違う。
頭と体、それだけじゃ強くいられない心が...俺にもあった。だから...
「俺から話はする。居場所ないんだろ?"海賊"にならねえか?」
「わ、私、ですか?」
「それなりには戦えるんだろ?事情を説明すればオヤジも納得する」
「オヤジさん...」
「俺は"白ひげ海賊団"の一員だ。本当は"白兵"を勧誘に来たんだがアンタも...放っておけない」
島の果て、海との境界。俺はそこに浮いたまま彼女の答えを待った。
今すぐに答えを出せというのがそもそも間違っているとは思う。けど、もし、もしも本当に彼女の居場所がないのであれば、俺に付いて来て欲しい。そしたらきっと世界は変わる。目に映る世界が...少しだけマシに見える。俺が抜け出せたように、彼女も...
「あ、あの、」
「.........急に悪い。けど、」
「いや、あの、あなた..."白兵"をお捜しなんですか?」
「そうだ。とはいってもどんなヤツか知らないから聞こうと思ってアンタを助けたんだが」
「あの、私、です」
「え?」
「その"白兵"...私のことです」
俄かに信じられず、そのまま浜に降りて手合わせしてみりゃすぐに分かった。
デカい得物の繰り出す風は尋常ではなく、俺が"風使い"でなければあっさりと岩場にぶつけられていただろう。それでなくても彼女の動きは速い、あのデカい得物も簡単に振り回せる...今まで対峙した賞金首が子供のようにも思えるくらいの強さ。
「私...あなたに付いて行きます」
「.........いいのか?"海賊"だぞ」
綺麗な微笑みの中に見えた決意。
「私を戦力でなく"人"として連れ出そうとしてくれた。だから私は"あなたに"付いて行きます」
「.........じゃあ、行くか」
「はい!あ、えっと...」
「セトだ。改めて...よろしくなエリス」
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