「私は、歩き出すよ」
「皆と同じくらい...大事な仲間、家族が出来たんだ。皆と同じくらい、守りたい人たち」
「だから私...行ってもいいかな。皆のこと、忘れないからさ」
.........愛してる。ずっと、愛してる。
生まれて来て良かった、と。産んでくれて有難う、と。今なら、言える。
今すぐに昔のようには笑えないかもしれない、泣くことだって出来ないかもしれないけどもう少し待って。無邪気だった自分を取り戻すにはまだ時間は掛かるけど...心配しないで。これからは何にも制されることなく生きてくと、自分らしく生きてくと誓うよ。
「じゃ......行って来ま、」
「セト発見!シン!エア!セトを発見したぞ!」
「.........は?」
両脇にシンとエアを抱えたエースが爆走して来るのが見えた。
「「セトちゃーん!」」
「な、何で、」
「「おじーちゃんがいってもいいよーっていったからきた」」
「で、お目付け役のエースくんだ!」
「危ないから待ってろって言っただろ?」
「おれは無視かよ。大丈夫だ。ぐるーっと回ったが海兵は一人もいねェらしい。運いいよな」
「「おはな、もってきたの!」」
ほら、と二人が見せたのは摘んで来たものではなく何処かで買ったと思われる花。
そんなの買ってたなんて俺は知らなくて...二人の横でエースがにこにこ笑ってる。俺が"此処"へ立ち寄りたいと言ったのは皆知ってた。勿論エースも知ってて...それで気付かれないよう、買っておいたってこと、か。
「.........そうか。なら、此処に、置いてくれるか?」
「「はーい」」
皆、遠くから見てくれているだろうか。
「.........紹介する。この子たちが私の大事な家族」
「ちょっ、おれは!?」
生きる道筋を新たに照らしてくれた子供たちを抱き締めた。その横でエースがうるさいがそこは無視した。
「彼らと一緒に、歩いてくよ」
二人が俺に光を差してくれたように、俺も二人に出来ることを沢山していこうと思う。
皆はもう...居ないから、皆にもしてあげたかったことの全てをこの子たちへ。いや、皆の代わりじゃないんだ。皆と同じくらい大事だから...そうして生きていこうと思うんだ。生きて、後に生きたことを誇りに思えるようにしたいんだ。
「だからおれは!?」
「お前は単なる俺の"兄弟"なんだろ?」
それからこいつ、ガープさんの孫だ。会いたがってたよな。
「おれはセトを嫁にする男だ!そしてもいっかいセトが"私"って言うのを聞きてェ!!」
「うっせえよ馬鹿が」
.......似てるよ。どうしようもなくお節介なところとか。きっと、皆も好きになる。
こいつらだけじゃない。俺が今いる仲間たちは皆あったかいんだ。何の繋がりもないのに皆あったかくて......大好きなんだ。
「......行って来ます。俺たちの無事を祈ってて」
「「いってきまーす!」」
また、機会があれば来るから。それだけ心で呟いて此処を後にしようとしたらエースだけ立ち止まった。
シンが手を引いて促し、エアが飛び付いたのを笑顔で引き剥がしたエースが「ちょっと先に行ってろ」と言ったらから従った。妙に真面目に、妙に落ち着いた様子でそんなこと言われたら嫌とも言えなくて。俺は二人の子供の手を引いて、ゆっくりと反対方向へと歩き出した。
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