ONE PIECE [LC] | ナノ



「.........此処が、お前の故郷か」
「進路変更させてごめん」
「グララララ!さっさと墓でも何でも参っちまえ。くれぐれも捕まるなよ」

次の目的地がシャボンディ諸島と聞いて、俺は無理にオヤジに頼んでこの島の近くまで来てもらった。
"海軍私有地"となった島、多少リスクがあることを分かっていてオヤジは了承した。勿論、船は着けない。行くのは俺だけ。

「.........行って来ます」

俺は、用意した花束を持ってその島へと飛んだ。


最後に来たのはもう随分昔のことだけど、ガープさんの計らいなのか見える町並みは変わっていなかった。
自分たちで切り開いた新たな道、おぼろげな記憶を頼りに作った家、自分たちと共に成長するようにと植えた木...何もかもがそのままだった。時折、手入れもしてくれているんだろう。本当だったら風化しててもおかしくないのに残された俺たちの家は...泣きたくなるほど懐かしい。

「.........ただいま」

中に入ると、今の俺には小さすぎる椅子が並んでいて...荒らされた形跡がなくなっていた。
俺が此処で最後に見た光景は、この椅子たちが乱暴に転がっていた。机も引っくり返っていた。窓ガラスも割られていて...そこには恐怖の爪痕と絶望しかなかった。それが...今は何もなかったかのように片付けられてテーブルの真ん中、古い写真が何個か飾られていた。

幼き日の俺たちが...笑ってる。ガープさんが残したものだ。
仕事用だと部下に怒られてたけど「黙って撮れ!センゴクにはうまく話しておく!」とか言って...何枚も撮ってた。最初は引き攣りながら撮られてたけど...自然と本当の笑顔になれたのは俺たちがガープさんを信用してたから。大好きだったから。
この中から一枚だけ...皆とガープさんが一緒のもの、一枚だけでいい、貰って帰ろう。誰よりも大きくなってしまった、この家族の中で生きてるのは俺だけだから...この胸に残しておきたい。

写真立てごと取り上げて埃を払う。それをポケットに仕舞って俺は外へと出た。


海軍の私有地になっているが人の気配のない島、ゆっくり、噛み締めるように歩く。子供だった俺たちでも走ればすぐに一周出来るくらいの小さな島に何故悲劇が起こったのか、なんてもう考えない。起きたものは起きた、過ぎたことは過ぎた。今はただ、眠れる事を祈りたい。

島の果て、綺麗な海が見える場所に...俺たちが作った墓がある。そして、仲間の墓も。
皆、同じ場所に眠る。今は安らかに眠れてるだろうか。こんな花くらいじゃ皆の分にはなりもしないけど、どうしても添えたくて買って来た。あれから随分時間は経ったけど...許して、くれるだろうか。

「.........久しぶり。遅くなったけど、会いに来たよ」

当然、返事はない。この墓もまた荒れることなく綺麗にされている。彼が、俺の代わりに弔ってくれていたんだろう。仲間たちの墓標前に花を添えて手を合わす。皆、此処で俺を待っていてくれただろうか。

「色々あった、けど、復讐は終わった。心配させて、ごめん」

彼らがそれを望んでいたかどうかは分からない。でも、復讐は、終わった。
此処を離れて独りで生きた時間は色んなことがありすぎて...全てを話すことは無理だ。だから...今のことだけ伝えようと思う。

「今、俺......私、海賊になった。あんなことがあっときながら...多分、皆怒るだろうね。でも、」


――― ようやく、居場所が見つかった。



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