事態にうまく付いて来てなくて情報処理に手こずってるセトは未だに目は見開いたまま口は開かないし挟まない。前門のエリス、後門のエース...どちらにも簡単に腕を握られてるってのに抵抗もない。こんなこと、今までにあっただろうか。
「大体、エース隊長は迷惑がられてるのが分からないんですか?」
「め、迷惑!?」
「そうですよ。事あるごとに抱き付いて抱き締めて追い回して...何度セトさんが溜め息を吐いてることか」
「そんなにか!!」
「嫌われてるんですよ。セトさんはエース隊長が嫌いなんです!」
.........キツい、これはキツすぎるよい!
物理的攻撃にはめっぽう強いエースだが精神的攻撃には弱いというか全く慣れてない。なのにそれで攻められちゃショックがデカすぎるだろい。しかも半ば間違ってねェから援護しようにもフォローしようにもし切れないよい!
にしても...流石、陰険と思しき元護衛隊出身。言動でのイジメ方にもイジメられ方にも慣れてるよい。ただ...フフン、と笑うエリスとかは見たくなかったが...あ、サッチはどうしてんだ。あァ、ヘコんでんのかい。
.........って、何がどうなってるのかおれすら処理出来てねェ!!
「.........嫌われてる、のか」
「嫌い嫌い嫌い、嫌いに決まってます!」
「.........いや、」
ん?ようやくセトが起動したのかい。
「嫌いじゃない」
............
「結婚しようセト!!!」
「いやあああああ!ダメです!エース隊長なんかじゃ幸せになれません!!」
「幸せになれないとかてめェが決めんなバーカ!」
「馬鹿!?いいですよ表に出て下さい!その体バラバラにして差し上げますから!」
「野蛮野蛮野蛮!暴力で解決は馬鹿の極みじゃなかったのかよ」
.........あァ、何だかんだで似た者同士だったのかい。けど、二人して同じ事復唱してるっつー自覚はないらしい。
子供みたく馬鹿馬鹿言い合う二人と巻き込まれるセト、地面にめり込みそうなくらい落ち込むサッチ。
おれはただ一人、その異様な光景を眺めつつ思った。
.........モビー号は平和だ。
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