度肝を抜いたカミングアウト
「.........ごめんなさい、サッチ隊長」
.........あァ、やっぱり。空気は十分出てた。
普通に考えたらあのオッサンでは無理だよなァ。ウチにゃまだまだ若手もいるしエリスもまだ若ェし...わざわざこのオッサンでなくてもいいっておれだって思うよい......つーか、サッチヘコみすぎだろ。オーケーもらえると思ってたのかい。
「ち、因みに...好きな人、とか、は」
え?それを聞くかい?いくら何でもまだそんなヤツとか...
「あー...います、ね」
「ノーウェーイ!!」
いるのかい!つーか、うっせーよいサッチ!
大袈裟に膝を付くサッチの横で微妙にモジモジするエリスの視線の先――...
「私...セトさんが好きなの」
「「「ちょっと待てェい!!」」」
珍しくおれらの声が重なった瞬間。マイペースエリスも驚いてる。
セト......なんでお前はそうモテるんだ。いや、セトは"普通"だったらモロ順当な線を行っててサッチみてェなオッサンから比べたら遥かにイイ男かもしれねェけどなァ。でもな、そいつはお前にゃダメなんだよい。おれらも騙されてたがな、そいつ何たって女だからな。
「セト...おめェ、ちゃんと話してなかったのか?」
「.........話してたつもり、だった」
「エリス!こいつはおれのだって言ったろうが!!」
「黙れエース!突っ込むとこはソコじゃねェよい!!」
「.........おれ、セトになりたい」
「サーッチ!てめェも黙っとけよい!!」
冷静なセトと真逆のエースと落ち込むサッチ...ちょっとそいつらを横に置いておれがエリスの前に立つ。
折角告白したってのに報われねェのはサッチと同じだけどよい、少なくともお前にはまだまだ長い先がある、未来がある。だから、突発的に死のうとかは勘弁しろよい。今から話すこと...全力で受け止めて生きてくれ。
「エリス、落ち着いて聞け」
「はい」
「セトは...女だよい」
「.........はい?」
「あいつ、女なんだよい」
.........
いや、硬直されて目をパチパチされても困るよい。
けど間違いねェことだし、かといっておれらが「証拠見せてやれ」とも言い難いんだがねい、裏拳飛んで来るから。
これを機にセトも一度自分を再認識すべきだねい。お前、男前すぎなんだよい。だから同性からそういう目で見られる。その度に「ごめん。俺、女なんだ」とか言われなくて済むようにしといた方が無難だろうねい。つーか、エースはホモなのか?みたいな疑問にエリスも辿り着かなかったのか?とちょっと聞きたいところなんだけどねい。
「わ、私......」
「あー...混乱するのは分かるよい。けど、」
「初めて女性を好きになれた」
「は?」
「今まで私の周りに居た女性とかって全然ダメで、護衛隊に居た時も皆にホモかホモかと言われて...」
「.........ホモ?」
「途中から"ああそうかも"って投げやりに思いましたけど...それはそれでなかなか意中の人は見つけられなくて」
「いや、いやいや、」
「女性にも興味はなくなってましたし...あ、でも初めて好きになった人がセトさんなんです」
「ちょっ、」
「セトさんが私の運命の人なんですね!!」
ガッとおれを突き飛ばしてセトの手を握るエリス。セトはただただ放心と硬直、エースは逆上してエリスを引き剥がそうとして...サッチはおもむろに背後からエリスの胸元を掴んだ。が、何も掴めなくてエリスの胸元を撫でるだけ。
「.........ない」
「胸なんてありませんよ。女じゃありませんから」
............
性別不明にも程があるよい!!
セトが女だって知った時よりも遥かに衝撃がデカすぎる!半端ない攻撃を惜しみなく受けて全身打撲...内臓破裂するくらいの勢いだよい!は?マジで言ってんのかい?あ、いや...サッチの硬直具合が証明してるから間違いねェ、な。
「セトさん!私にして下さい!私...エース隊長よりも幸せにしてみせます!」
「だあああああ!んなこと有り得ねェぞボケ!!」
「有り得ないとかそれこそ有り得ないですよ。本当にどうしようもない馬鹿ですねエース隊長」
「馬鹿!?よーしエリス、表出ろ。燃やしてやる」
「野蛮。暴力で解決なんてそれこそ馬鹿の極みです」
うわ、キャラまで変わりつつあるねい。言葉遣いこそ丁寧なカンジだが言ってることは毒だ毒。小奇麗な顔してる分、怖いよい。
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