君の笑顔
「なァマルコ」
「ん?」
「おれは何処か病気なのかもしれない」
......万年病気に見えるが自覚症状が出たのは初めてじゃないかい?
よく寝てよく食ってボーッとして、下手したらその三つを同時進行してた時点でお前は変に決まってるよい。戦闘においては先陣切って船まで沈めて来るような無鉄砲ぶりも発揮するんだが、それをマイペースだと言うんなら程があると返してやる。落差が激しすぎる。
「セトが...気になるんだ」
「そりゃおめェの(認められてないが)兄弟だろい。もう一人の弟を気に掛けるのと同じだろい」
「いや、確かにルフィも気になるのは確かなんだけどよ、セトはまた少し違うんだ」
割と近くに居る所為じゃねェのか?二番隊に居るからな。
「あいつ...何考えてるかサッパリ分からねェ」
「確かに (てめェが分かり易すぎだろい)」
「笑わねェし怒ってばっか」
「確かに (それはてめェが怒らせてることが多いよい)」
「笑えばいいのに......きっと可愛い」
「最後の言葉は胸の内に秘めといてもらいたいねい」
こないだからアレを可愛い可愛いって、それ聞かせたらまた激しく怒るに決まってるだろい!エースくらいの年頃だと「カッコいい」は良くても「可愛い」は禁句だ。特にセトなんかは何か知らねェけど未発達にも程があってそれがコンプレックスな節があるんだ。その発言は危険すぎるだろい。ボディに風穴開けられても文句言えねェぞい。
「二番隊の中で未だに笑わねェのセトだけなんだよなァ」
「何か笑わせることでもしてみたのかい?」
例えばそうだな...面白い話をしてみたとか。
エースの周りは変なヤツばっかだからなァ、その辺の話でもしてりゃ嫌でも面白いと思うが。あとはイゾウ女装スパイ事件だとかサッチ変質ストーキング事件だとか...そういうネタもあるわけだから話題としては豊富だろい。特別、捻る必要もない。
「モノマネからコントから......あと小芝居もした」
「暇人かい!で、笑わなかった、と?」
「そう。せめてサッチをボコる時くらい嬉しそうにすりゃいいのに」
「それはそれで問題だよい。ドS認定沙汰だ」
「すっげェ冷たい目すんのな。"フン、下らない。バッカみてェ"的な」
......そりゃそうだろうよい。
「あー...笑わねェかな。絶対可愛いのに」
「その発言自体が病気だろ」
セトが来てから色々何かおかしくなってる気がするよい...
エースはこんなでジョズもサッチもこんなで、ナースたちも妙に騒いでて...彼女たちによる寝込み襲撃事件も起きた。朝イチでとてつもねェ悲鳴が木霊したのは20年以上居て初めてのことだったよい。それ以来、セトが更にナースを避けるようになっちまった。
「.........あ、セトだ」
甲板掃除にやって来たセトが普段通り無表情で仕事を始める。
「おーいセトー」
エースが呼べばこっちに気づいてゆっくりと歩いて来る。
あー...改めてよく見りゃマジでむさ苦しい連中から比べたら可愛い部類には入って来る。線の細い美少年的な、そういったもんはあるだろうなァ。ウチのクルーはゴツゴツガサガサがメインだからセトは特別に近ェよい。
「何か用か?」
ただ惜しいな、こいつは本気で態度が良くねェ。
まだこの船に乗ってそんなに時間も経ってねェのに態度は隊長クラスだ。それでよく他のクルーから苦情が......って、それこそエースの所為だったな。「コレ、おれの弟だから!!」「お断りだって言ってんだろ」みたいなのを見てりゃ誰も何も言えねェか。
「おう。お前ちょっと笑って見せろ!」
「.........は?」
「笑って、見せろ」
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