アプローチ大作戦
「と、いうわけでだ。今から作戦会議に移る」
「.........どうでもいいが俺も参加しねえといけないのかよ」
「同感だねい。エースと二人でやってくれ」
「君たちの力がどうしても必要なんだよマイフレンド!」
心底ウザイ。いつマイフレンドとかになった。と、セトも言いたそうな顔してるよい。
嘘としか言いようのない理由を並べてエリスにシンとエアの面倒を見てもらい、その隙にセトを引っ張って来たサッチは談話室という名の物置の樽におれらを座らせた。円卓会議風にしたかったのか密着度が半端なく、それにかこつけて擦り寄るエースに苛立ちを覚えるセトの顔がモロ見える。何か...不憫だ (色んな意味で二人とも) 。
「さてさて諸君。おれはまずこう主張しよう。エリスが好きだ」
「.........知ってるよい」
うんうん、と無表情で頷くセトがついで以ってエースの首を締め上げてるが...止めるべきだろうか。
「でだ、こう...スマートにどうにかしたい」
「勝手にしてくれ。というよりサッチにスマートとか無理。ついでに脈なし」
「ぐはっ。し、辛辣な激励として受け止めるぞセト」
ポジティブすぎてイタイよい。激励どころか軽く否定されてるのに。
サッチうんぬんより締め上げられて捨てられて...それでも諦めないエースの姿勢もイタイ。懲りずにベタベタしてるし。
「まァ、とにかくスマートにお付き合いをしたいわけだが...」
「だから脈ないって言ってるだろ」
「ぐうっ、な、ないのか、脈、」
視線をセトからおれに移されたところでおれも同感。脈はねェよい。
むしろ、現状で誰か気になる人がいる素振りは見て取れねェ上にセトにベッタリとくっついてるわけだからセトが一番その辺は見えてると思う。そのセトが「脈なし」と言うんだから間違いねェだろう。で、それよりもセトはエースの方がウザいらしく裏拳がエースの顔にヒットした。
「それなりになくもないのか!?」
「ありそうには見えねえな俺からすれば。ちょっとマルコ、こいつを引き剥がしてくれないか?」
「よ、よい」
無表情でおっかねェ。
とりあえず言われた通りエース引き剥がして制しとく。
「大体、何も言わないわ、大して距離も縮めてないわでエリスもどう脈を感じろと?」
「うっ、そ、れは...」
「俺が邪魔だってのは...まあ気付いてたが、それで?俺にどうしろと?」
ま、まァ...サッチも返す言葉もねェだろうよい。
物陰からエリスを見てるだけのサッチにわざわざセトが手を差し伸べるなんざしねェ。それはセトの性格上だ。今までずっと自分のことは自分でして来たんだ。恨みがましい視線を感じたところで「何甘えてんだカスが!」くらいに思ってたんだろうよい。
分かる...分かるよいセト。けどな、ヘタレなんだよいサッチは。
「スマートにどうにかして付き合いたい、だあ?」
「は、はい...」
「何寝呆けてんだ。スマートとか無理なんだからちゃんと足掻けよ」
「.........はい」
「俺からは以上だ」
.........男前だ。それが先天性でも後天性でもイイ性格だ。馬鹿にでも分かりやすいよい。
スッと立ち上がってサッチを一瞥して出口へと向かうセトに誰も「待った」とは言わない。いや、言わせねェくらいハッキリ助言したんだ。サッチにも響くものがあったんだろう。現在も引き剥がし中のエースが何故か誇らしげにしてるのはアレだが、エースにも何か響いたんだろうか。
「あ、もう一つ追加」
扉に手を掛けた瞬間、思い出したかのように振り返った。
「エリスは人より鈍いが好意を素直に受け止めるタイプだ。死ぬほど足掻かなくてもハッキリ言えば伝わる」
素っ気ない、だが一番納得するアドバイスを置いてセトは出て行った。
ここまで男前で面倒見のいいヤツがこの船に居るだろうか。何だかんだで優しいヤツだとつくづく思った。
「.........おれが女だったらアイツに惚れる」
「だろうねい。お前より男前だしなァ」
「サッチよりイケメンには違いねェけどやらねェぞ!!」
「.........おれの手には負えねェよ」
確かに。手懐ける術はない。
「てかさ、普通に告白しろって話だよなァ今の」
「まァ...手っ取り早く言えばそうだねい」
「じゃ、そういうこった。頑張れサッチ」
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