宴会の段取りはベンが指示していたらしい。
着々と準備をするクルーたちを目の前にオロオロするセトが居たからおれの特等席に座らせた。どっかの島で買った座り心地満点の椅子だ。謳い文句は女性の胸に挟ま......いや、止めよう。
酒が飲めるのかと聞けば飲めると答えた。
好きな食べ物はピザだと答えた。女ヶ島の名物にそんなのがあるか姉さんに聞いておこう。
着々と準備が進んで、いつものように笛が鳴る。
「えー...疑惑のあったお頭が、ついに、本格的なロリコンへの道を進み始めた!」
気付けばヤソップのやつが定位置で叫んでる。
恒例の乾杯の音頭だが...何か解せん。おれは別にロリコンってわけじゃねェ。
「その道は前途多難!恋敵は稀に見ぬ美少年!勝気は、全く、露程にも、無い!」
.........一部を除いて否定出来ない。
「そんなお頭の前途と、此処に新たな船員を祝して―...」
慌てて耳を塞ぐセトをよそにおれはガラスを高く掲げた。
「「「「「乾杯!!!」」」」」
動揺を隠し切れないセトにベンが仲間として認められた事を説明した。少し間があって...初めてセトが笑ったのを見た。それを見ておれもベンも笑った。
「良かったなァセト」
「.........はい!」
「少しずつ慣れて行こうな。色んな事に...っ」
そりゃもう色んな事に...と思っていたらジョッキで頭を殴られた。
「ふ、副船長さん!?」
「セクハラだ。お頭には見張りを付ける」
「なっ、」
「しばらくはある程度の節度が必要だ。弁えろ」
それがおれからの条件だとベンは言った。
Searchlight
「あんな男前が居るからおれたちの立場がねェんだ!」
「そーだそーだ!」
「世の中間違ってる!」
「そーだそーだ!」
おーおー僻んでる僻んでる。おれも仲間だが乗らねェ。
稀に見ぬ美少年!勝気は、全く、露程にも、無い!だったなァ。それはお前らも同じだ。馬鹿め。
「.........何食ったらあァなるんだろうなァ」
「持ち合わせた遺伝子だ。どうしようもない」
........何故かベンがトドメを刺した。おれにも刺さった。
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