ONE PIECE [LC] | ナノ

冷静に考えた



彼女を攫うとベンに告げたら「やっぱりそうか」と溜め息を吐かれた。
一緒に居たクルーたちにもロリコン扱いされたがもはや否定も出来なくなった。あの目に惹かれた時から...無意識におれはこうするつもりだったのかもしれない。だから、ベンの問いにも答えられなかった。「どうする?」の答えが。

「だがな、おれは意に反する事が好きじゃない」
「船長命令だそ?」
「だとしてもだ。お嬢さんの意思を聞く」

.........はァ、これだから堅物は。
意思を聞いても彼女をその辺に捨てるわけには行かない。出来れば女ヶ島に戻したいが...それもまた難しい。九蛇と繋がりも無い。あ、レイリーさんなら...とは思うが、それもしたくない。あの人、意外と女好きだしなァ。


「.........セト?」

遠ざかる船を彼女は見ていた。
"風花のセト"が乗っている白ひげの船...もう小さくなって消えかかっている。

そんなに愛おしい存在かと言いたくもなったが、義姉妹だから仕方ないと無理やり片付けておく。あまりにも無理やり過ぎてすぐにイラッとしたが...向こうにはおれより粘着質そうなエースが居る。あいつなら...心許すかもしれねェ。だから是非頑張ってもらいたい。

「あの子は大丈夫だ。心配いらない」
「.........シャンクス、さん」
「そんな顔してたら逆に心配掛けることになるぞ」

と、いうよりおれの首が落とされる。
大事な義妹を託す兄貴の目をしてたな...女なのに。ありゃマジでおれの事を殺しに掛かるかもしれねェ。それはそれで恐ろしいもんだ。

「.........それにしても悔しいなァ」

お互いにお互いを想う。そんな光景見せられたら悔しさが倍増する。

「おれじゃ勝てねェか?」
「.........誰にですか?」
「"白ひげのセト"」

多くの時間を共有した結果。それは頭で分かってても悔しい。
同じくらい時間を与えられたなら、おれも同じようになるのか?と言われたらなら...それは無いだろう。それにも気付いているからこそ悔しい。

「若さでもスタイリッシュさでもお頭の負けだ」

気配も無く背後からベンの声がした。

「なっ、おれだってそこそこイイ男だぞ!」
「向こうは礼節も弁えている。勝てる要素は...身長と強さしかない」

紫煙を吐きながら...痛いとこを突きやがる。
確かにその通りだ。あァその通りだ。女にしとくのが勿体ねェくらいの存在だった。認めりゃいいんだろ。あ、そういや勧誘しそびれた。ちょっと仲間にしたいとか思ってたのを忘れてた。くそ。何か色々むかつくなァ。

「それで」
「は、はい」
「いいのか?お頭はこのままお嬢さんを攫う気なんだが」
「いいも悪いも攫う!船長命令だ!」
「アンタの意思は聞いてない。お嬢さんの意思を確認している」

.........この船の船長は誰だよ。
毎回そうだ。審議を行うのはいつもベンだ。おれの人選を信用しちゃいねェ。おれは甘いとか信用し過ぎてるとか小言ばかり言いやがる。そのうち禿げるぞって毎回言うんだが...そんなに苦労してるわけじゃねェってスカしやがる。

「この船における役割を考えるな。おれたちの顔色も窺うな。勿論、お頭の意思も無視しろ。
要は...お嬢さんがこの船に残りたいか降りたいかを聞いている。意思はそれだけでいい」

まァ...こういうとこがあるから頼りにしてるおれが居るんだけどな。

静かに、時を待つ。急かす事もしない。
セトの口から意思を、ベンはそういう男だ。だからおれは何を言われようとも奴を嫌いになれない。

「.........残っても、いいですか?」

ベンの目を見て、おれを見る。誰も、否定する事は無かった。



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