「てか、海軍基地があることくらい教えとけっての」
「言っとくけど、おれは知らなかった」
「お前にその辺は期待しちゃねえよ。マルコたちのことだ」
立ち尽くして会話をしてればジリジリと剣だの銃だのを突き付けて歩み寄って来る軍人さんたち。
少なくとも俺らは自然系の能力者だからどっちも効かねえ。あんま戦闘はしたくないが、少しだけのんびり構えさせてもらう。
「オイお前!お前も白ひげの一味か!」
いいえ、善良な一般市民です。とは言い難いな。
「まあ...雑用ですが」
「捕らえろ!!」
「ちょっ、素直に答えすぎだろ」
「嘘吐いても仕方ねえだろ?」
どうせ一般市民だって言っても尋問には遭うわけだし。
それに俺は...海軍捕まっちゃ困る理由だってあるんだ。だったらそう言って逃げた方が早い。
「セト、"風陣壁"出せ。撒くぞ」
「了解。俺からあんま離れんなよ」
――"風陣壁"!!
「と、捕らえろ!火拳と横の男もだ!ヤツら仲間だ!」
放った風でヤツらが一歩も動けなくなった。銃声も聞こえなくもないが、この風を割るにはそこそこの威力だったり覇気が必要になる。
それなりに時間は稼げるくらいのものは出してるからゆっくりと逃げる余裕はあるが...海軍ってのはしつこいからさっさと立ち去りたい。面倒だから飛ぶか?とエースを見れば、何か、様子がおかしい。
「......エース?」
「........."炎上網"!!」
「お、おい!」
風に重ねて放たれたエースの炎。その炎が風に撒かれて悲惨なくらい渦を巻いて...その頂上に何故かエースが立ってた。
「エース!!」
「よーく聞けクソ海軍!おれの連れはなァ、白ひげ二番隊隊長補佐セトだ!」
「え、俺、いつ補佐に...」
まだ新人で雑用で置かせてもらってるつもりなんだが。
「おれの補佐でオンナで...おれの嫁だ!!!」
「!!?」
「い、今すぐ本部に連絡しろ!!火拳に嫁が、」
「俺は嫁じゃねえ!!!!」
――数日後
「セトー、おめェ町で何して来たんだよい」
いつも通り甲板の掃除をしてる最中、頭を掻きながらマルコがやって来た。
「別に...あ、エースがいた所為でちょっと海軍とモメたような気がしないでもない」
「それでか。おめェの手配書が出たよい」
「手配書...俺の?」
あの日のことは...思い出したくねえな。でもまあ冷静に考えれば海軍とモメたんだ、出ないとは限らないが...何かマルコの様子がおかしい。
早く見せたいのか勿体つけてるのか、とにかく微妙な含み笑いで手配書をゆっくりと俺の方に向けた。写真の顔は確かに俺、何処で撮られたのか無表情な横顔が貼られている。こういうのも何だが...随分と男前に撮れてる。
「"爆炎のセト"...って、俺、炎とか使えねえんだけど」
「あー...エースと合体技した所為じゃねェのかい?」
「あ、そうだ。使った使った。最悪。で、懸賞金1億8500万ベリーって...初頭手配なのにすげえな」
「白ひげ海賊団だからねい。けど見るとこはそれだけじゃねェよい」
ほら、と指差された箇所。
白ひげ海賊団、二番隊隊長補佐"爆炎のセト"の下、
「.........ポートガス・D・セト(仮※注・女性)、て、」
俺、そんなミドルネームとかないんだが。ついでに※注・女性とか...ふざけすぎだろ。
「これで世界規模でエースの嫁になったねい」
.........
「ちょっ、マジか!?海軍に連絡して手配書の修正させねえと!!」
「直接依頼すんな。諦めろよい」
.........これを、セトとかハンコックたちに見られた日には、死にたくなるかもしれない。
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