ONE PIECE [LC] | ナノ

真剣に手解きを乞う少年



「なァサッチ...」と珍しく真面目な顔をしてエースが近づいて来た。
どうせ(セト絡みで)しょーもないことだろうと思っちゃいたが案の定というヤツで、真顔で阿呆なことを言いやがった。

「おれは真剣に、本気でセトを嫁にもらおうと思う」
「......で?」
「どうすりゃいいんだ?」

そんなの知るかよ!!そう口にする前に思いっきりエースをしばいていた。




セトの過去を知っても女だと知ってもおれらは別に何も変わらねェ。
まァ、それなりにビックリはしたさ。「弟じゃなく妹として扱わねェと!」とか「だから可愛かったのか」とか「なるほどそれならナースも可愛がるよなァ」とか、ジョズとふんふん頷いてみたりする衝撃はあった。けど、今更こう、どうしていいかとかは悩んじゃいねェ。あいつも特に変わった様子もなく雑用してるし、ガキとも遊んでるし、戦闘すりゃ相手を木っ端微塵にするし、ナースからも相変わらず逃げてるし。これでちょっとそういう扱いしようもんなら真っ二つにされそうな気がする...あいつ、怒らせるとこえーし。

いや、本当にあの日、あいつがおれらが裏で動いたあの日は怖いってもんじゃなかった。
ああなったマルコを目の前に怯むことなく立っていたってことに今となっては「おー」っと感心するがな。フツウだったら大の大人でもビビッたり言い訳したり...とにかくオロオロするところをあいつは動揺したりしなかった。多分...それだけ自分を偽ってなかったんだ。


いや、今はそのことは置いといて。


「あのなエース」
「ん?」
「セトを嫁にするにはセトの了承が必要不可欠だ」

嫁にしたいから嫁にする、なんて一方的なことだったらおれだって嫁にしたかったヤツが死ぬほど居る(キッパリ)。一方的が認められないからおれには嫁が居ない......つまりはこういうことだ。エースがどんなに嫁にしたくてもセトが嫌だと断ればそれまで。エースがどう言おうが無理だ。

「と、いうよりエースはセトは付き合ってるのかい?」
「うおマルコ!お前どっから、っ」
「恋人でもねェのに嫁はないだろうねい」

.........スルーか。まァいい。

「おれとセトは恋人(キリッ)」
「嘘だろ。全くその要素なし」
「思い込みもそこまでいけば清々しいよい」

何をどう勘違いした時に恋人だって胸を張れるんだろう...不憫な弟だ。

ここ数日で見たお前とセトの光景と言えば...掃除の邪魔したらしく高度な回し蹴りを喰らって撃沈。それから子供たちに食事をさせている邪魔したらしく皿ごと口の中に突っ込まれて撃沈。クルーたちと珍しく会話をしていたら邪魔したらしくラリアット喰らって撃沈。そうこうしてたら奇襲騒ぎが起きてセトが珍しく弓を使って応戦したら...1本だけエースに刺さって撃沈。

.........と、こんなことがあっても恋人って思えるんならマゾ確定だろ。

「つーかよ、肝心のセトはエースが好きとか言ったのか?」
「言うわけない。けど好きに決まってる(キリッ)」
「本っ当に、清々しいよい」

同感だ。ここまで馬鹿も進行すると清々しい。で、マゾ確定。
んー...もういっそのこと放置すんのが一番な気がするなァ。何かあってもセトなら自己解決するだろうし。ちょーっと間違ってエースがあいつを襲ったにしても返り打ちに出来るだろうし。むしろ、スパッと「エース無理」とか言っちゃいそうだし。あの真顔でスパッと言われりゃエースも諦めるかもしれねェ。

「まァ...アレだ。恋人で好きに決まってるんだったらおれら言うことねェじゃん」
「だねい。ま、後はセトから嫁オーケー貰えばいいわけだし」
「.........ごめんなさい。嘘吐きました」

ですよねー。だったら見栄張らずに最初にそう言えばいいものを。

けど何つーか、改めてこう考えてみりゃ少し引っ掛かることがあるんだよな。
この馬鹿は馬鹿なりにきちんと意思を示して"セトが好きだ"と言ってて、セトはこの馬鹿ほど馬鹿じゃねェからその辺も分かってると思うんだ。これが本気か冗談か...勿論、おれらでも分かるんだけどよ。だったら結論を出してやりゃ済むと思うんだ。白か、黒か。いや、どっちでもねェでもいいと思う。そしたらエースの言動も変わるわけだし。でもそれをしない...宙ブラリってやつ。

「あーあ、セトとデートとかしてみてェなァ」
「.........一気にランクダウンしてねい」

宙ブラリってことは...悩んでるってことなのか?嫁はさておき、意を受けるか受けないかで。

「デートすりゃいいんじゃん。頑張って誘え」
「誘って外に出るタイプじゃねェじゃん」
「まァ...一理あるよい」

ちらり、遠くにいたセトを見たが相変わらずの仏頂面。顔の筋肉固まってる系。だから全然分からねェんだよな。考えてることも思ってることも何もかも...って、怒ってんのは一目瞭然なんだが、それ以外は全く分かったもんじゃねェ。エースが分かりやすさ満点なら、あいつは分かりにくさ満点。プラマイゼロ、バランスいいっちゃいいが...それじゃエースはダメなんだよなァ。馬鹿だからハッキリしてやらねェとダメなんだ。

まァ、おれ個人の意見としては...

「よーし、ここはおれとマルコで一肌脱いでやろーじゃないか」
「おれもかい!?」

どちらも最善のカタチで幸せになって欲しい、なァ。
今でこそ馬鹿の塊みたくなっちまったエースも少し前まではセトみたいなもんだった。手負いの獣、その傷は計り知れないもので近づけば牙を向けて来るようなヤツだった。オヤジへの襲撃は数知れず、おれらにズタボロにされてもそれでも背は向けねェ。一度向き合えば絶対に逃げない。

「当たり前だろ。可愛い"弟"のためじゃねェか」
「.........向こうの可愛い"妹"が応じるとでも思ってんのかい?」
「そこはマルコの器量だ!」
「てめェの器量を発揮しろよい!!」

そういうとこ、おれは好きだ。けどずっと心配してる。同じ事を...あいつにも言える。

「と、いうことだ。おれらに任せろエース!」
「.........あァ、任せたからな!サッチ!マルコ!」


それが"家族"だから。




真剣に手解きを乞う少年




「で、どうするんだい?」
「はァ?」
「あいつがデートに応じると思うのかい?」
「思わねェ」
「そうだろうが。どうするんだよい」
「あー...だからそこはマルコの器量で!」
「いっぺん死ねよい!!」


BACK


(10/22)
[ 戻る付箋 ]

×
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -