ONE PIECE [LC] | ナノ

と呼ばれた子供たち

数年前、まだ小さかった子供を捨ててく母親を見た。
何があったのかは分からない。だけど少なくとも「この悪魔!」と罵っていたのは聞こえた。親のくせに...子供をそんな風に呼ぶこと自体に怒りを覚えたが、シンとエアは泣いてなかった。おそらくコレは日常茶飯事的なことで当たり前になってて...そう考えると余計ムカついた。

「......大丈夫か?」

声を掛けたのはアイツらが母親を追わず、かといってこれからどうするのか分からなくなってたからだった。
俺も同じような道を歩いて来てたからすぐに分かった。頭の中が「どうしよう」でいっぱいになって泣きそうになって、だけど泣いたところで意味はなく助けてくれる人もない。俺も、似てたから...助けたかった。

「付いて来るか?俺も...同じなんだ」
「「......」」
「俺はセト。お前たちは?」

頼るところがない。もしかしたら危険かもしれない。それでも道は一つしかない。二人は俺に付いて来た。

当時、俺が住んでた場所は木と枝の間に作った壁のない小屋だった。毛布代わりに使ってたのはデッカイ木の皮、床は当然剥き出しの丸太で、かろうじて屋根はあったが...あの頃の二人には辛かっただろうと思う。でも何も言わなかった。
調達して来た食事は最初から素直に食べてくれていたが驚くほど小食だった。好き嫌いがあるとかそういうのではない。おそらく日常的に食事という食事を与えてもらえなかったんだと思った。可哀想に、そう思えたのは自分と重なっていたからだ。

......二人が名乗ったのは、俺と出会って三日後だった。


「シン、エア」

そう呼べば返事はしなくとも俺に近付いた。話はきちんと聞いた。頷く動作だけはしてくれた。でも笑わなかった。
二人はいつも手を繋いでいた。寝ても起きても一緒、手を繋いだままだった。
後で知ったがこの二人は双子で会話をしなくてもそれだけで意思疎通が出来るらしい。だから言葉なんかいらなかったとか。

その頃の俺の仕事は...今と同じ賞金稼ぎだった。
年が年で働かせてくれる人なんかなく、かといってちまちまと小遣い稼ぎをする気はなかった。やるなら一攫千金、そのためならば別に自分が傷ついても構わなかった。どうせ死ぬ身には違いなかったから。
そんな中で出会った二人の子供...更に金を必要とするようになった。今まで以上に狩る、今まで以上のリスクを追う、命の保証すら自分で出来ない程に。でも、俺が簡単に死ねない理由が出来たのは二人が居たからだった。


「悪魔」という名の能力を知ったのはそれから更に半年したくらいだった。

相変わらず言葉は少なく笑うこともしない。金はそこそこあって着る服も買うことだって出来る、好きな物を与えることも出来るのに何も言わない。素直であって素直でない、可哀想なくらい子供らしくない子供だった。だけど時折、不安そうに俺を見るようになったのはこの頃で、俺はその目にどうすることも出来ずに居た。

「どうしてそんな目で俺を見るんだ?シン、エア」
「「......」」
「俺は言わないと分からないぞ」

当然、返事はなかった。その代わりに見せられたのは...彼らの能力。
土を自在に操れるシン、水を自在に操れるエア。二人が手を繋げば...更に力は増幅して一瞬にして山を積み上げることも出来た。逆に山を切り崩すことも出来た。自然系悪魔の実の能力...それが親に「悪魔」だと罵られて捨てられた理由だった。俺は驚いた。単純に驚いたと同時に納得した。そして、やはり同じなんだと思った。

「それが...悪魔、か」
「「......こわい?」」
「別に。お前たちは...俺が怖いか?」

自分から、狩ること以外で能力を見せたのは初めてだったと思う。
俺もまた自然系、二人に隠してたわけじゃないが見せることはなかった風を自在に操れる能力を持ってた。二人にとっては自分たち以外では初めての能力者で、ホッとしたんだと思う。

「俺は、怖いか?」

二人の答えは「NO」だった。



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