Christmas day.
「.........何だ、コレ」
「「サンタさんきてくれたー!!」」
朝、何食わぬ顔をして起きたセトはいつものように子供たちを起こした。
昨晩...いや、日付の変わった夜明け前に一騒動あったことを子供たちに悟られぬようにしながら例の靴下を見ていたわけだが、おかしなことに気付いて思わず言葉に出てしまった。それはもう自然に、零れ落ちた。
「「二つある!!」」
そう、靴下の中身は二つ。それは子供たちだけのはずなのに...何故かセトの靴下の中にもあったからだった。
「ねえ、あけていーい?」
「あ、ああ...」
「「わーい」」
無邪気な子供たちはいい。本当にサンタがやって来たと思って遠慮なく受け取れるから。だけどセトは違う。不可解にも多いプレゼント、寝てる間にまた誰かが入れたのかと首を傾げた。もしくは...昨日やって来たどうしようもないサンタのうちの一人が入れたか。
「「セトちゃんみてみて!!」」
子供たちが取り出したのは...とある町で可愛い可愛いと言っていた着ぐるみのようなパジャマ。セトが買ったものだった。
とても欲しがっているように見えたのだが、いざ買おうかとすれば子供たちは首を横に振った。何を考えたのか彼らは遠慮したのだ。それが少しセトには痛かった。とても素直な分、我慢を覚えるのも早かった。それがあまりにも痛くて...サンタに便乗した。
「これこれ!」
「エアとおそろいのパジャマー!」
「ああ...本当だ。良かったな」
「「うん!!」」
良かった、喜んでる。セトはホッとした。
「で?もう一つは何だったんだ?」
「「んー...?」」
子供たちが取り出した箱にセトは見覚えがあった。そう、同じものが自分の中にもあったから。
セトもまた子供たちと一緒にそれを開けた。決して大きくないラッピングされた木箱に入った物...その中身は、
「.........おじーちゃん?」
「おじーちゃんのマーク!!」
「.........なるほど」
白ひげ海賊団のマーク、誇りだ。セトは不覚にも笑ってしまった。
こんなに幼い子供たちに誇りを刻むには抵抗がある。だからいつでも付けられるようにベンダントにした、というところなんだろうか。大方、船大工たちに作らせたんだろう、出なければコレは何処かに売られているような代物じゃないから。自分の中身もきっと同じ...と思いきや、何故か指輪だったのにセトは驚いたが。
「おじーちゃんとおそろい!」
「エアはばかだな、みーんなとおそろいだ」
「.........ああ、俺ともお揃いだ。大事にしないとな」
少々乱暴に子供たちはそれを首に掛けた。プラチナだろうか、それは銀色に静かに光る。
セトもゆっくりその指輪を左手の中指に入れた。オヤジのヒゲが少し痛いが体に刻むことを考えれば痛いうちには入らない。人生初の指輪がオヤジだとは...とセトはまた笑った。
「ねーねー」
「あとひとつ、セトちゃんのあるよ?あけないの?」
「あ、ああ...開けてみる」
オヤジのプレゼントよりも更に一回り小さな箱。ゆっくりラッピングを剥いでいけば中から出て来たのは、ピアス。
「これは...イーグルウィング」
「セトちゃんのコレとおなじ!」
鳥の羽、今、セトが付けているペンダントとよく似たカタチをしている。セトのものは彼女と分け合ったから片翼だがコレは両耳用で左右、対で揃っている。これは...耳に穴を開けろってことなんだろうかとセトは苦笑した。が、すぐに気付いた。
「片割れは誰に――...」
「はァ?おれまだ貰ってねェぞ!?」
「貰える気マンマンかい!で、片割れは失くしちまったのかい?」
「.........いや、」
「あるならおれに寄こせ!」
エースだ。いつだって片翼を気にしていた。見える度に揺れる片翼を睨みつけていたことを思い出した。
(.........馬鹿なヤツ)
張り合って何の意味があるんだか、と。
手の中で転がるピアスをただ眺めて...また箱に戻した。今はまだ付けることが出来ないから、と箱をポケットに仕舞った。
「ねーねー、これ、おじーちゃんにみせたい!」
「サンタさん、おじーちゃんのおともだちかもしれない!おじーちゃんがおねがいしたかもしれない!」「あ、ああ...それなら俺も行こうか。一緒に」
「「うん!」」
「じゃあまず着替えだ。あ、その前に顔も洗えよ」
「「はーい」」
バタバタといつもの日常。子供たちの世話をしながら自分も準備をするセト。
何も変わらない、だけど変化があったとすれば...子供たちと自分にある誇り。それが動く度に目の中に入って来ることが少しだけ嬉しかった。本当の"家族"になれたような気がして...
準備が出来た三人は船長、白ひげの元へと一歩踏み出した。が、
「.........げっ、」
「「サンタさんがいっぱいわすれものしてる!!!」」
部屋の扉が外開きだったら絶対に外へは出られなかっただろう。広くはない廊下、扉の前にそれくらい置かれていたのは明らかにプレゼントの箱。まるでお供え物のように置かれていた。セトは呆然とそれらをただ眺めた。
ラッピングこそバラバラだが、リボンの色が青・緑・赤色と三種類しか見当たらないところをみると靴下の色と連動しているのだろう。中にはご丁寧に宛名のあるプレゼントもある。
「これは...サンタの忘れ物じゃない、みたいだぞ」
「えー?」
「俺も知らなかったが...サンタは沢山いるらしい」
「サンタさんっていーっぱいいるんだあ」
積み上げられたプレゼント、仕分けして開けるまでにどれくらい掛かるだろう。出来れば何処かに送り主の名前の一つくらいあればお礼の言いようもあるのだが、とセトは頭を抱えたのであった。
サンタは星の数くらいいるんだね
「.........おいエース」
「ん?」
「ほら。サンタが置いてったヤツの片割れだ」
「.........へ?」
「欲しかったんだろ?サンタに感謝するんだな」
「.........あァ、まァ...うん、大事にす、ん?」
「何だ?」
「お前...その指輪、」
「ああ、もう一人のサンタからだ。初めて指輪とかもらった」
(.........先、越された)
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