Searchlight
ある日ソニアが発作を起こした。
夜な夜な夢に見るは昔の出来事。トラウマという名の発作は一度や二度ではない。夜な夜な、何の前触れも無く起きる。どんなに気丈に振舞おうとも、瞼を閉じれば脳裏に甦る。それはまるであの出来事を思い出せ、決して忘れるな、と言わんばかりに...
「も、もう嫌!殺して!殺して!!!」
「落ち着いてソニア!目を開けて!」
現実が平和で平穏で幸せであればある程に記憶は鮮明に甦る。
「わたしはっ、あんな風になってまで、生きたくない!!」
沢山の死、様々な拷問、生きて味わう地獄...
「わたしはっ、セトみたいに生きられない!わたしは...っ」
「......ソニア?」
――私は誰かの身代わりなんて嫌よ!!!
これが全ての始まりとなった。
最初は何を言っているのか分からなかった。
起きた発作を抑えようと皆必死になって彼女を抱きしめていた。同じ恐怖を味わった者として...明日もまた生きて歩けるようにと必死になっていた。それはソニアだけのためじゃない。自分のためでもあった。自分も生きていけるようにと...自分を抱き締めているのと同じだった。
ソニアは、人より過敏に色んなものに反応した。
刃物、ロープ、果物...自分に起きた何かの所為で色んな物を拒んだ。それも長い間...誰よりも苦しんだ。だけど、その中でも一番拒んだのは...とある日の出来事だと知ったのは、本当に最近のことだった。
もう一人の私の灯火が消えそうになった日。
あの日、ソニアは一部始終を目撃していたんだと...ハンコックはようやく教えてくれた。
私は、行かなければならない。そう思った。
今更だと思う。今更、何を言おうか。何が出来ようか。
全ては自己満足に過ぎないことであっても、それでも私は...全てを抱えた彼女に会わなければいけない。例え、拒まれようとも...同じ黒渦に飲まれようとも。
全てが私の所為ならば、私も同じ渦に飲まれるべきだと思った。
だから私は、島を出た。
あなたを、もう一人の自分を捜す旅に。
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