ONE PIECE [SHORT] | ナノ
いつもと違う日

横に走る、縦に走る。空駆ける光はある意味、芸術品だ。でも、

「.........まるでタチの悪い槍だな」
「んなことどうでもいいからさっさと錨を下ろして!」
「へいへい」

ナミの機嫌はすこぶる悪い。どうやら雷が苦手らしい。
ザアザア降る雨の中、船は当然揺れないわけもなくてナミの判断の下、航海は一時此処でにストップすることになった。大海原の真ん中、周囲には何もないから何処かに停泊することも出来ない。錨を下ろしたのを確認したら皆さっさと船内へと戻ってしまった。

「あーあ、つまんないの」

私は好きだ。こういう荒れた天気、走る稲妻、揺れる船...
いつもと同じはつまんないし、いつもと同じ風景ばかりじゃ面白くないし。だからこういう日は好きだ。全然違うから。

「いつまでそうしてるつもりだ」
「.........いたの」
「連れ戻して来いって言われたんだよ」

と、ゾロが軒下から叫べばいいのに濡れるの覚悟で私の近くまでやって来る。
このどうしようもなく揺れる船の上、お互いが直立を保つために仁王立ちしてる姿は...かなり滑稽かも、なんて思ったりして。

「いくら馬鹿でもこんだけ濡れりゃ風邪ひくだろ。戻るぞ」
「まあ、上回る馬鹿は平気かもしれないが私はそこまでないからな。戻るか」
「あァ?いつ、おれがてめェを上回る馬鹿になったんだァ?」
「最初からだろ」

考えんのが苦手で気付けば先に手が出てるとか馬鹿だろ。
ついでに言えば方向音痴だし、迷子癖もハンパじゃない。それをまた認めないから馬鹿なんだよな。まあ、素直に認めたところでサンジとかには馬鹿にされるだろうけど。

「大体、何を好き好んでこんなとこにいるんだ?」
「んー」
「馬鹿だから海に落っこちるぞ」
「.........馬鹿はアンタだっつーの」

ゆらゆら、を通り越してガタガタ揺れる船の甲板。雨なのか潮なのか、ここまで来ると分からない。
ただ分かっていることは芸術的な閃光が空を走っていて綺麗だってこと。それが非日常的だから私は見惚れたいということ。それが理由で此処に居る、ということ。これを間抜けなゾロに理解出来るだろうか。

「まァいい、とにかく戻るぞ」
「.........もうちょいしたら戻る」
「はァ?」
「先戻ってていいよ」

多分、理解出来ないだろうからゾロにそう言った。
てっきり呆れて船内に戻ってくのかと思いきや、ゾロは溜め息を吐いて私の横に座り込んだ。もうお互いにどうしようもないくらいの濡れネズミだ。立っていようが座っていようが乾いたところはない。

「お前を連れ戻さねェとナミがうるさいんだよ」
「あー...」
「雷に飽きたら起こせよ」


そう言ってゾロは雨とも潮とも分からない水滴を浴びながら目を閉じてしまった。


いつもと違う日


しばらくして船内に戻ったらナミが大声で私を怒鳴り付けて風呂場に押し込んだ。


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