#10
窓が開かない理由は、至ってシンプルなものだった。
ゴ ミ 詰 ま り である。
サッシ枠にめちゃくちゃゴミが挟まっており、開閉不可能となっている異例事態。こんな光景初めてです。
脳内が真っ白になり、呼吸を忘れてしまうかと思いました。ええ、うっかり召されるかと思いました。
コレを発見してからずーっと某ウェットシートで下枠を拭いていますが、積もった埃どもが強固で強固でどうしようかと思う程には強固で、ついその辺に落ちていた汚いボールペンでゴミを抉り出しております。勿論、現状は片面だけです。だって開かないし開けたいし。
薄汚いカーテンは申し訳ないけど廃棄しました。
枠の掃除中に接触しては頭上に埃を落とすとか意味が無さ過ぎる。よって、ゴミ袋(大)にぶち込みました。何しても怒らないって言ってたので容赦しません。てか、もう知るかよ!!となっていた。
現時点でゴミ袋が四つがパンパンになった。
このゴミの置き場も決まってなくて廊下に放置中。マスクしていて分からないけど異臭騒ぎになってないだろうか…コンビニ弁当の残骸は出来るだけ下の方に入れたつもりだけど。
「.........」
安請け合いしたのが間違っていたんだろうか。
日当2万改め、時給2千円…すでに2時間は経過したので4千円は稼いだ。でも成果は出ていない。最早、このままでは詐欺だ。そんな言葉が脳内を巡る。
そう、ちっとも片付いていない状態のままである。
地雷は展示中だし、空き缶もシンクの中、洗濯物も放置中、あるらしい家電は見当たらず、いかがわしい本の移動先も不安定。何も進展していないも同然。
早く...早く窓を開けて洗濯機に辿り着きたい!煎餅布団だって干したい!邪魔だし!
無心となり枠をゴリゴリしては窓開けに挑戦する。
少しずつ開き始める窓。少しずつ出入りする風に励まされているような気すらする。
「あとちょっと...もうちょっと...」
真っ黒の埃をボールペンで掻き出しては某シートで拭う作業。
同じく真っ黒だったサッシの枠は少しずつシルバーへと変わってゆく。片面だけ。
「.........」
最後の一掻きであろう瞬間がついにやって来た。
――ザクリ。キュキュッ。ガラガラガラ...
「.........開いた」
ベランダに通ずる窓が、開いた。
「開いたどー!!!」
大歓喜である。
泣くかと思った。今までにない達成感が込み上げて声を上げて泣くかと。
でもここで泣く事はない。未だ旅(掃除)の途中だから、これから先がまだまだあるから。
そんなポエマーな事を考えながら、よっこいしょと立ち上がり、外の世界を眺めた。
「.........」
網戸はボロボロで最早網戸ではない。まぁ、今はいい。
一応、物干し竿はあるけどクモの巣だらけ。これもまぁ許す。拭けばいい。
肝心な洗濯機はありはした。
ありはしたが......どう見ても朽ちていた。見るからに錆びて使えそうもない。
曇ったガラス越しに見た洗濯機は、曇りの所為ではなく確実に死んでいた。
「詰んだ...」
本日、二度目の詰みである。
2019/11/09
[ 戻る / 付箋 ]