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.........うう、彼は何も応えてくれない。
でも表情が険しくなってる。これって...そういうことなのかな。

「で...今気付きましたのでもうぶっちゃけますね」
「.........あァ」
「マルコさん、理由を聞くのが怖かったんじゃないですか?」

.........ちょっと前のこと。
告白したのは良かったけどフラれたことがあった。簡単にシンプルに「ごめん」と言われて私は笑って「分かった。有難う」と告げて逃げたことがあった。結論は「付き合えない」っていうのはよく分かった。でも、理由は...聞かなかった。単純に怖かったから。脳内で気付いてたことがリアル回答になった時、私はきっと笑えないと思ったから聞かなかったし聞けなかった。

彼が好きだったのは、きっと私の友達だったから。

マルコさんも...同じだったのかな。
いや、それよりもっと深いところで悩んで、聞けなかったのかな。だとしても、やっぱり、寂しい。

「.........小生意気なJKの意見を怒らずに聞いて下さって有難う御座いました」

何も言わない、反応しない。
そんなマルコさんに謝って、顔を見るのも怖くなって俯いた。さっきまでウマウマ食べてたお菓子もちょっと今は食べれそうにない。喉はカラカラだけどジュースも...今は飲めそうもない。

そんな私の横、マルコさんが一つ溜め息を吐いて手を伸ばした。
私が抱えてたお菓子を一つ手にとったのに驚いて、釣られて彼の顔を見た。微妙な表情、複雑な想いを秘めた目。

「.........なァ」
「は、はい」
「JK的には...時間ってどう思う?」

時間、時間、ですか。
今も刻々と流れている時間。一秒前はもう過去で一秒後は何よりも近い未来だって、先生だったかな?話したことがあった。

「JK的には...」

でもそれはあくまで時間。多分、彼が聞きたいのはそういうことじゃない。

「心の時間は人それぞれなので速いも遅いも間に合うも手遅れもないと思います」

私は今まで生きた時間の中で何度もふと思い出して誰かに謝ることがある。「あの時はごめんね」と。
だけど謝られた方はスッカリ忘れてたり「今更どうしたのよ」と笑ったりする。この時にいつも思う。引っ掛かってたのは自分だけ、と。でも、その言葉を聞いて初めて思う。言って良かった、と。

「心に、時間は関係ない、と?」
「ないです。ただ人それぞれですけど」

今もそう。もう二度と会えないこの人に、何か響けばいいなと思って話してる。

彼は相変わらず無表情に近かったけど少しだけ口の端を上げて笑った。
そして、ボソリと呟いた。初めて、私の名前を呼んで。



「ベレッタは心理学に向いてるかもねい」



―――PM 5:00



不思議な時間を過ごして、不思議な人と出会って、不思議と私の進路は決まった。
高2の途中、適当な大学を決めていたけど思い切って教師に打ち明ければすぐに三者面談をすると騒がしくなった。遅い、遅すぎる進路変更と教師も両親も喚いたけど痛くも痒くもなかった。

それは私の心が決めたことだから。

遅すぎる進路変更の所為で私の視力は奪われた。でも引き替えた代償は大きかった。
受験は無事に終了。届いた封書には合格の文字。そして高校卒業...晴れて私はその分野へと一歩踏み出せる事となった。


「ねえ!お母さん変じゃない?」
「あー...変じゃない変じゃない」
「適当!?ちゃんと見てよ!!」


鏡の前、少しだけ大人になったような自分が映っててくすぐったいカンジがする。
制服はない。今日という日はスーツで迎える。だから余計に少しだけ大人になった気分でいる。

「どうでもいいけど遅れるわよ」
「そりゃ困る!!行って来ます!!」

新しい一歩は、あの日と同じようにワクワクした気持ちで始まった。

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