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結局のところ、待ち合わせ場所へと逆戻りした私たち。
コンビニで買った飲み物とお菓子を盛大に広げるもやっぱり空気は重いまま。勝手に「頂きます」と言ってお菓子をぽりぽりし始めたわけだけど...マルコさんは缶コーヒーに口を付けつつも沈黙。
多少なりとも年上っていうのは難儀な生き物なんだろうか。
パパッと思った事を口にすることが出来ないらしい。かと言ってこっちが突いても失礼だし怒られたら困るからジッと彼が話し出すのを待つ。でも、お菓子を食べる手は止められない。

しばらく私のぽりぽり音が響いた。
本当に聞くだけの体勢の私を見たマルコさんが小さく溜め息を吐いて話し出した。

「.........彼女が留学すると言い出してねい」
「はい」
「イイ機会だから別れようって話になった」

.........テーマ、恋愛、別れ話。
重っ。ウチらの「あいつマジうざいから別れたった」レベルじゃない空気、重っ。けど聞きますよ、うん。

「.........」
「.........」

えっと、それだけ、ですか?

「.........」
「.........要は...別れたくないと?」
「いいや、別れてェんなら仕方ない。ただ理由が分からない」
「あー...聞かなかったんですか?」
「あァ」
「.........何故?」
「.........さァな」

うーわー...全然意味分からないです。
と、いうより面倒臭い。テーマ結論は出てますよ「彼女に別れ話を持ち出されたので別れたった」っていうね。でも、理由不明で理由を知りたいのにどうしたらいいのか、自分がどうしたいのかが不明。一応、此処までが本人談で...え、感情があまりよく見えないですよマルコさん、だ。

とりあえず...此処までの流れから彼が知りたいのは「別れたいと彼女さんが言い出した理由」。ぶっちゃけ色んなパターンがあると思うんですが...

「えっと、JKの意見を怒らずに聞いて頂けますか?」
「.........あァ」

別れたい理由には複数あると思われます。
まず...貴方が嫌いになりまして(要因は様々)本当は別れたかったのです。イイ機会ですからスパッと別れましょう。
次に、貴方は好きですが今後離れると先が分からない(自他を含む浮気等の発生)ので、喧嘩する労力も勿体ないので別れておくのが無難でしょう。
次に、貴方の反応が見たいのでこんなこと言っちゃいました。離れても好きだと言えますか?続けられますか?ねえ、教えて。

みたいな。
因みに私の友達は一番が多いです。時々三番もいて...大変なことになります。

「.........意味分かんねェよいJK」
「マジですか!?柔軟さに欠けますよソレ!」

JKが頭捻って考えたサルでも分かる解説をイミフという理由の方が分からないですよい!
と、半ばショックを受ける私に彼は冷静に話を続けた。

「だってそうだろう?おれは続けても良かったし別れても仕方ないと思った。アイツの意思を尊重しようって思ったんだ。留学する決意を鈍らせるつもりもねェし、向こうで頑張れとしか言えねェよい」

ふむふむ。でも...何か寂しいよ今の。

「.........だったら彼女の意思は?」
「何?」
「理由、聞いてもらえなかった彼女の意思は何処へ?」

留学を決めたのは確かに彼女だと思う。それで別れたいと言い出したのも彼女。けど、それってどんな想いで決意して彼に告げたんだろう。どんな顔で...そう言ったんだろう。

「今の言い分だと見掛けは確かに物分かりのいい彼氏で素敵ですが、彼女の深層心理にまでは辿り着いてなくないですか?」

例えば、怒りながら告げられたならマルコさんは自分に非があるかもしれないと悩んだかもしれない。泣きながら告げられたら...宥めて自分の想いを告げたかもしれない。でも、きっと彼女さんはどちらでもなく話したんじゃないかな?って思う。心を読まれないように、話したんじゃないかなって思う。

だとしたら寂しいよ。
誰よりもマルコさんを知るであろう彼女さんが敢えて理由を言わなかった"理由"を、聞かれなかった彼女さんも聞けなかったマルコさんも...どちらも寂しい。

「私が思うに、少なくとも何で?って聞くべきだったと思います」

何も聞かずに頷くのが恋人じゃないはず。ちゃんとお互いを理解し合うのが恋人だと思いたい。

「その結果がどうであれ、です。じゃないとマルコさんが引き摺りますよ?女性は意外とアッサリサッパリな人が多いですからね。彼女さんも例外とは言えないですよ」

時の流れが全てを解決する、なんて凄くカッコいい言葉。
でも違うと思う。解決するんじゃなくて時間の流れを利用して解決っぽく仕立ててるだけ。私は...そんな気がする。

「"続けても良かったし別れても仕方ない"って、どっちでも良かった=どうでも良かったに聞こえるのは...私がJKだからですか?もしかしたら彼女さんにもそう聞こえたかもしれませんよ?」


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