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その後、連絡先を交わすこともなく関係性はその日で終わった。
「何かあれば...それこそ縁があれば」を合言葉に俺たちは互いを断った。
彼女はまた一人で...いや、姉と二人で頑張ると言って。俺は彼女の友で、彼女も俺を友として...それを励みにこれからを過ごしてくと約束した。


あれから何日経っただろうか...そろそろ新たな学校に馴染んだ頃だろうか。


「最近、真田副部長が腑抜けてるんスよね」
「なっ...何を言う赤也!」
「だって、ボーッとしてるじゃないスか」

数日が経過した今、彼女がどうしているかは分からない。
本当に転校したのか、今の環境は問題はないのか、気に病んだところで知る術はない。敢えて、誰かに聞いて回ることもしない。それが何の意味もないことを俺は知ってる。

「恋、だな」
「蓮二!貴様っ!」
「あはは。見苦しいよ真田」
「幸村まで!」

ただ、あの時のように笑っていてくれたならば...
今の俺が出来ることはそれを祈ることだけしかない。


「あーかーやー!」


休憩中、コート全体に響き渡った声。
女子の声、そうも珍しいわけではないが誰もが振り返り、赤也を冷やかす。赤也は「友達」だと言いつつも、笑顔でコートの外へと移動して行く。二人連れの女子が赤也と談笑し、そしてあっさりとこちらに戻ってきた。

「真田副部長、呼んでますよ!」

.........俺を?
肘で小突かれて、今度は赤也が俺を冷やかす態勢になったがまだ理解出来ていない。冷やかされる理由が不可解で、もう一度、向こう側の女子を眺める。

「知り合いではないが?」
「でも用みたいっス」

ただ促され、足を運ぶ理由も分からぬままに赤也の友人とやらの元へ。
下級生に知り合いはいても俺を呼び出すような者はいない。徐々に近づけど、やはり知り合いではなく見たことあるかないか程度の女子だ。

「.........何か用か」
「あ、いえ、私ではなくてこの子が......って、何背を向けてんのよ!」

背を向けた女子、その背を叩かれたことで振り返る。
笑顔を放出、気さくで気兼ねもなく、ただ真っ直ぐに......

「弦ちゃんって有名だったんだね!」

彼女の発言は周囲を震撼させるものだった。
隣にいた女子も硬直、たまたま歩いていた生徒も立ち止まる。聞き慣れぬ愛称、気安い態度が原因とも言えるだろう。

「新しい学校、ココだったの」
「.........」
「赤也と話しててビックリしちゃった」
「.........」
「だから、何も言わずに驚かそうと思ってね!」

あの日の彼女は、そこに立っていた。
何も変わらず、破天荒で活発で明るくて...裏も表もない姿であの日のように笑っている。

「で、今日は弦ちゃんの彼女候補に志願しに来た」

集まったテニス部員の野次馬までも黙らせた一言。
硬直する俺たちを目の前に彼女は何の空気も感じていない。

「間接チュウした仲だし、ね?」

旋風を巻き起こすが如く、彼女は上陸した。
全てを越えて、新たな風を背に笑顔で俺の前へと舞い降りた。

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