#08
今日に限って...間が悪いと言うか何というか。
「よっ、頑張ってるかい」
「.........頑張ってますからお引き取り下さい」
「ちょっ、おれ助っ人で来たんだけど!?」
今日、店のバイトが二人も風邪でダウンしてくれて、仕方なく本社へヘルプを要請したけど...まさかこのタイミングでサッチが来るとか聞いてない。
「あーこんなことなら指名しとくんだったなァ」
「え?おれに何の不満が...」
「全部だ全部」
マジで勘弁してくれよ。こんな時代遅れのフランスパンとか今は戦力になってもいらねェ。
いや、普段ならすっっっっげェ助かるヤツなんだけどさァ...何つーか今日は、今日だけは全っ然嬉しくねェ。
.........今日はあの子が来る日なんだ。
「こんなことならマルコに相談すりゃ良かった...」
「おいおい、マルコは良くておれはダメなのかよ」
「ダメ。今日は特に」
「......ほほォ、今日は特に、なァ」
やべ、余計なこと言っちまった。
「だーれが来るのかなァ〜エースちゅわ〜ん」
「うぜェ」
「美人のお姉様なら紹介しないとダメよ!」
「そんなんじゃねェ」
サッチが期待するようなオンナじゃねェけどサッチの許容範囲は広い。目とか付けられなきゃいいんだが...
「「こんばんはー」」
宍戸っちと......あの子の声だ。
「はいはい。いらっしゃいませー」
「馬鹿!お前は厨房行け。いらっしゃい二人とも」
「馬鹿とは何だ馬鹿とは!てか、友達?にしちゃ若いけど...」
「席は空いてるところにどうぞ」
「おれスルーかい!!」
.........思いっきり困惑表情を浮かべられた。二人から。
あーもうマジで指名しとくんだった。今だったらジョズとかビスタでも良い。普段なら邪魔だけどサッチよかマシだ。
「えっと...」
「あ、おれ、別店舗から派遣されたサッチ。ヘルプよヘルプ」
「あ、よろしくお願いします...」
「よろしくしなくていいよ。で、ご注文は?」
邪魔なサッチを押し退けて注文を取る。後ろで何か言ってるが...肘鉄して黙らせた。
「いつものヤツね。了解しました」
呻くサッチを引き摺るように厨房へ。つーか、料理担当はサッチだ。働け。
「いやー若いねェ」
「うるせェ働け」
「カップルだろ?略奪はいかんよエースくん」
「そんなんじゃねェよ」
あの二人は幼馴染みで同じ塾に通ってて受験生で、宍戸っちはビビが好きであの子は彼氏が居なくて...だからカップルじゃねェ。岳ちゃんもそれを証明してくれる。嘘じゃねェ。
「エースは清楚系が好みかァ」
「.........勝手に言ってろ馬鹿サッチ」
見た目は清楚系でも格闘技が好きで回し蹴りが出来る子だバーカ。
少しずつ距離を縮めて、少しずつあの子を知る。今のおれには...それしか出来ない。
だから邪魔すんな、そう言いたくてもう一発肘鉄喰らわせといた。
2016/04/13 18:39
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