#05
しがないアルバイターは基本、ポストの中は見ない。
だって「宅配」「引っ越し」「いかがわしいバイト」のチラシしか入ってないから。だけど、たまーにはきちんと確認することもあって......それが今日みたいな日だ。
「やァ、君のポストぱんっぱんだねェ」
「.........ですね」
誰かに指摘された時。さすがにこの時だけは無視出来ない。
と、いうより何故ここまでお隣さんとの接触が多いんだ?此処、私たち以外にも誰か住んでるはずなんですけど!
「ちゃーんと確認した方がいいよ?」
「.........そちらも、」
「あらら、ホントだ」
指摘されてなんですが、ウチと同じくらいパンパンになっているのがお隣さんのポストなんですけど。
ダイヤル式のポストを開けると雪崩のように紙が舞い、同じようにお隣さんもポストを開けたらしく同じように舞う。そう、どちらのものか分からないくらいに床は紙だらけだ。てか、こうなることくらい分かって後で確認して欲しかったんですけど。
「これがラブレターだったら嬉しかったんだけどなァ」
.........今時ポストにラブレターって。
手紙ですら珍しくなってしまった時代にわざわざポストにラブレターを入れる人って珍しいと思いますけど。で、どう見ても確認しなさそうなポストに投函する猛者もいないと思いますけど。ラブレターの時効過ぎて催促状が入ってしまう可能性も高くないですか?と心で突っ込む。
「さて、どうしよっかコレ」
「えっと...確かごみ箱あったはず」
「じゃあ分別しなきゃね」
「あ、はい」
って、手紙等があるようには見えませんけどね。お互いに。
宅配、宅配、引っ越し、宅配、引っ越し、引っ越し、引っ越し、いかがわしいヤツ...が2件分。時々、違う種類のチラシも確認。だけど手紙のようなものはない。お互いに。
「何か寂しいねェ」
「え?」
「昔はさ、仲間から手紙とかあったんだけどなァ」
「.........私は実家に郵送されてるんで荷物と一緒に届きますよ。時々ですけど」
そう。私は今の住所を知らせてないから実家に届く。
年賀状くらいのものだけど、返事も実家住所で出している。何となく知られたくなくて。
「実家って遠いの?」
「まあ...近くはないです」
「寂しくない?」
「さすがに慣れました。学校もこっちだったんで友達もいますし」
「そっか」
.........何だこの会話。
世間話には違いないけど、何故かお隣さんとの会話では世間話感がない。やっぱり胡散臭い所為か。
「.........ん?」
そんな中、一通の手紙を見つけた。宛名は...私じゃない。
「ラブレター、みたいですよ?」
「え?おれに?」
「はい」
ただ、差出人は書かれてない。切手もないから...直接投函されたんだろう。
それをお隣さんに手渡すと相手のプライバシーも関係なく私の目の前で開けていく。ちょっと興味はなくもなくけど、何となく目を逸らした。大事な手紙かもしれないわけで......って、思いっきりグシャッて音がした!?
「え!?」
「ん?」
「ちょっ、それ、手紙...」
「脅迫状だった。今時流行らないよね」
きょっ、脅迫状!?不幸の手紙とかじゃなくて!?いや、それも流行らないけど。
「なっ、」
「いやーよくあるよくある」
「ないですよ!今時!」
てか、脅迫状送られるくらいの何をして生きてるんだこの人!?
へらへらっと笑ってポストを片付けて、さりげなく部屋に戻るよーとか言って私をエレベータまで連れてく。
あまりの驚きっぷりに呆然と従った自分がいたけど、脳内では更にお隣さんへの胡散臭さと警戒心がアップしました。
2016/04/13 16:16
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