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#04

.........社会人としての常識だ。コレは。

そう意気込んでお隣さんのインターフォンを押そうとして約5分は経過したと思う。
お隣さんが帰って来たのは確認済で、その後に外出した気配もないから間違いなく家に居るのは分かってる。だからこそ、このインターフォンを押して用件を済ませる必要があるというのに...何故動かぬかこの指は。

先日、お隣さんにゴージャス指輪をしたオバサマからの不思議な団体への勧誘で困っていたところを助けてもらった。偶然だったけど助かった。そのお礼に...来た。ただそれだけだが、異様に恐ろしい。

理由・そのお隣さんがちょっと胡散臭いからだ。

出会いはエレベータ内、振り撒かれた愛想で警戒心アップ。
二度目ましてはコンビニ内、急にスイーツを奢ると言われて更に警戒心アップ。
三度目ましては此処、謎の勧誘を瞬殺したので更に警戒心アップ。

.........やっぱり、帰ろう。
そう思って背を向けた時、そこに壁があることに気付いた。

「.........?」
「いやいや、上見てよ上」
「.........!?」

胡散臭い人...いや、お隣さん!?
い、いつからそこに気配もなく居たんだ!?

「ごめんごめん。脅かすつもりはなかったんだけど」
「あ、いや、その、」
「何か深刻そうにしてたし声掛け辛くてね」
「いや、それには、ですね」
「おれに何か用だった?」
「はっ、そうですそうです、そうでした!」

落ち着け落ち着け落ち着け。
用件を済ます。用件を済ます。お礼を渡す。お礼を渡す。

「この間は、有難う御座いました!」
「あァ、わざわざどーも」
「こ、これ、私のバイト先で扱ってる和菓子です、良かったら、」
「え?貰っていいの?嬉しいなァ」
「で、では失礼します!!」

持っていた紙袋を押し付けてスッと横をすり抜けようとしたら、何故か物凄く長い腕が邪魔してきた。当然だが、お隣さんの腕だ。

「わざわざ有難う。で?」
「へ?」
「君、いつも警戒してるでしょ?感心なことだけどおれ、ヤバイ人に見える?」

え?そんなことないですよ〜ウフフ.........とは言えない。口が裂けても。

「一応こう見えて...アレだ」
「.........はあ」
「えっと......うん。まァ一般人だ」

.........そうですか。
だったら私は超一般人ですけど何か?だ。

「そう警戒しなくても大丈夫だ」
「.........了解、しました?」

あ、うっかり疑問符付けた返事をしてしまった。
でもセーフ。お隣さんは特に気にした様子はない。

「うん。まァ、これからもよろしく」

どのようによろしくしたらいいのかは分からないけど、とりあえず頷けば通せんぼが解除されて私は無事に部屋に戻ることが出来た。更なる警戒心を持ったことは言うまでもない。

2016/04/13 15:53
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