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#03

自由すぎる私立白ひげ学園高等部。
色々自由なのはさておき。現在、半ばゲーム感覚で自体は進行中で私は猛ダッシュで立ち入り禁止区域を走り抜け、何とも言えない書庫...というより書館の前にやって来た。

『今の自分の自己PRをしながら入れ』
もうこの学校に入学して何度思っただろうか。何コレ何ソレ。
これって...指令だろうか。扉前にドドーンと貼り付けられている真新しい紙はどう見ても私宛の指令書みたいなものだ。しかも内容が自己PRって...何だか懐かしいよ。

この学校を知る前、公立高校を目指していたから面接練習がみっちりねっつり組まれていた時期があるけど、その度にこれを言わされて来た。で、結果として「それはマイナスのアピールに聞こえるぞ」と何度も言われ、何度も原稿用紙を書き直した。最終的に...誇大、嘘に近いものに見えて...嫌だったのを覚えてる。

深呼吸してノックを二回、返事はない。
もう一度、ノックを二回して...やっぱり返事はない。

「.........失礼します!」

一歩踏み出して扉を閉める。前方には誰もいない。
でもクラス、名前を響くぐらい大声で言ってお辞儀した。すると、その足元に『そのまま真っ直ぐ奥へ移動。此処という部屋に入れ』と書いている文字を見つけた。

(此処っていう部屋...?)

本当に...何ソレだ。
とりあえずまた一歩踏み出しながら指令通り、自己PRを虚しくも一人大声で言ってやる。

「私は幼い頃から本が大好きで様々な物語を読み、これらの本から感情を学んだと言っても過言ではありません」

始まりは皆と同じ絵本から。次はおとぎ話や昔話。気付いたら教科書のブツギリされた物語が気になって...図書室に通い詰めるようになっていた。勿論、友達ともきゃーきゃー騒いでたけど、同じくらい本を読んでハラハラドキドキもした。

「例えば...」

教科書に載っていた超有名な外国作家さんの本。
とっても短いながらも様々な感情が入り乱れてて...タイトルは脳から消えてしまったのに内容だけは覚えてる。悔しさ、嫉妬、罪悪感、劣等感を覚えた作品だった。

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ進みながら古い方の原稿内容を話していく。
誇大してない、一番最初に書いたありのままの自分の原稿だ。そして、今から口にするのは...想いだ。

「.........私は、本当に本が好きです。それによって得た知識もまたPRに入ると思っていました。ですが、これを自己PRとして文章提出した時、真っ先に否定されました。悲しかったです」

.........突き当たりに部屋が見えた。

「本が好きでよく読んでる、それがPRにならなければ私は何が残るか...必死に考えました。そんな矢先にこの学校の説明会に参加して...学園長の話を聞きました。私は...感動しました。まるで本を読んだ後のような感動がありました」

扉の前には『此処』と書いてある...成程。此処ですか。

「私は...本から感情を学んだと言っても過言ではありません。それは決して活発さがないだとか暗いイメージなどのマイナス面ではなく、こうして自分の意思でこの学園にやって来ることが出来た、自分自身を奮い立たせる感情を以って行動出来るプラス面として培われ、実際に私を動かせる原動力になったと思います」

.........よし、扉の前だ。
深呼吸してノックを二回、すると...「入れ」と声がした。

「.........失礼しま...っわ、」

入った途端、待ち構えていた人が私の頭をぐりぐりと撫で回した。
大きな手、温かな手がぐりぐりぐりぐりと撫でる。

「イイスピーチだったぞグララララ!」
「.........え?」
「おめェのオススメの本、確かに聞いた。今度捜してみよう」
「.........学園長?」
「おめェは読書一つだけじゃねェ。感情も豊かで行動力も判断力も特化してる。ウチの学園には充分すぎるぞ!よく来た!歓迎するぞ!グララララ!」

私は、泣いた。とにかく泣いた。込み上げるがまま泣いた。


これも後々になって知った話、この光景は全て本当に監視・撮影されており、赴任している教師は全員確認するらしい。で、シャンクス先生やスモーカー先生は何も言わずに私の頭を撫でた。例の着流し先生(名前は不明)とバッタリした時は「読む本の中にエロ本も入れとけ」と言われ言葉が出なかった。他にも例の用務員・ガープさんや事務長・ベックマンさんなどにも「良かったぞ」と声を掛けられた。

.........流石に恥ずかしすぎて死にそうだった。

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