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#01

1年前の学校説明会の時、此処の学園長が話した言葉にすっごく感動した。

『人は平凡で充分。だけど何か...何でもいい、一つでも特化したものがあればそれは素晴らしい。それは勉強やスポーツなんかじゃなくていい。掃除が得意だとか花を育てるのが得意だ...それでも充分に素晴らしい。そんな生徒たちをこの学校は望んでいる』

凡人すぎる私にはその話に涙が出るかと思った。
勉強フツーで運動フツー。ただただ読書が好きで本ばっか読んで...雑学はあります。この私の言葉にどれだけ先生たちがダメだと言ったことか。それがどうしたと何度言われたことか。

学校から合否の通知が届いた。そこには「合格」の文字とちょっと汚い字で「今度面白い本を教えてくれ」と添えられていた。正式な書類に添えられた温かな一言。まだ届いていない通知書もあったけど決めた。私...私立白ひげ学園高等部へ入学します!



..........て、意気込んで入学して驚いた。
自由、自由すぎる。一応、制服あるんだけど入学二日目にして着てる生徒が少なくなった。正式行事以外は服装は自由、らしい。それは先生もそう、らしい。で、普通に着流し姿の先生を発見した時は言葉も出なかった。

次、生徒が混線?している。
大学っぽいって言ったらいいのかな?まず最低出席日数を通知され、科目ごとに最低出席時間を細かく通知され...で、全学年全クラスの時間割がドドーンと冊子になって配られた。つまり、私みたいに体育が得意でなければ最低限出席して後は別のクラスの授業を受けていいってことだ。何なら自学をしてもいいってことだ。で、今も私の受けている授業には違う学年の生徒がいる。

「.........」

私の前の席の人がそうだ。ぶーぶー文句言いながらやって来たかと思えば「悪ィけど、寝てたら起こしてくんねェ?」と頼まれた。かと思えば私の左隣の席の男子も「あ、おれもおれも」と頼んで来た。で、「何だおめェもいたのか」「おう。よろしくな」とこの二人が会話したのを見てお友達かーと思ったわけですが...授業開始5分経過した時、お友達もお友達、類友なんだと思った。

「「ぐごおおおおお......」」

本当に寝た。一糸乱れぬ騒音が響く。

(......ど、どうしよう)

他の生徒たちも気付いてれば先生も気付いていて...ぴくぴくって額に青筋。そりゃそうだ。ガッツリ寝てるんだもの。

「せ、先輩、」

椅子を蹴ってみるけど反応がない。

「ね、ねえ、」

お隣の机を揺らしてみるけど反応がない。

(ど、どうすれば...っ)

「......こうやって起こしてくれ」
「!?」

こ、こわっっ。顔が怖すぎる先生が目の前に立って何故か私に「よーく見とけ」って言っちゃったんですけど!しかも...片手にはすっごく分厚い辞書......まさかっ。

――ドンッ!ドンッ!

「「いってえええええ」」

こっ、後頭部殴り付けましたよ先生。すっごい音しましたよ先生!

「......次からはこれで頼む」
「えっ、私、」

殴り付けた辞書をコトリと私の席に置いた先生は目を覚ました二人をギッと睨む。

「俺の授業で寝るたァイイ度胸だ。後で職員室へ来い。説教だ馬鹿D兄弟」
「ひっでェことすんなァ、スモ先生」
「ちょっと寝ただけじゃん。ケムリンせんせー」
「あァ?おれが教師がてめェらが生徒の時点でこの仕打ちは当然だ」

.........うわあ。
もう、何に突っ込み入れていいか分からない。兄弟?兄弟なの?スモ先生?ケムリン先生?そんなにフレンドリーでオーケーなの?そこに突っ込みはないんですか先生。で、あんな強烈な一発を私にやれと?そんなの無理です無理です。

「生易しい起こし方では起きないからアレくらいでいいからな」

と、怖い表情を少しだけ変えて優しい口調で言った先生。
彼らはブーブー先生に文句は言うけど私には「起きなくてごめん」と手を合わせて謝罪した。思ったより素直で優しい兄弟だ。ここは普通、ちゃんと起こせよと言うべきところなのにごめんって。そして「また寝たら起こしてくれよ」と言った。

うん、無理だ。私には出来ないです。
お二人を起こすこともスモーカー先生のように強烈な一撃を与えることも出来ないです。ごめんなさい。本当に...許して下さい。ごめんなさい。

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