NOVEL GAME γ | ナノ

if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F 応接間】

……わーお、無駄に広い応接間だなオイ。
普通に応接間だったらちょっとしたスペースでも良いんでないかい?
何たってこんな無駄に広いんだろう…そこらの企業の集団面接会場よりも広いよ絶対。
と、そんなこと考えながらキョロキョロと周囲を見ていれば、何処かでクスクス笑う声が聞こえた。

「だ、誰?」
「どーもー晩餐会に呼ばれたヴァンパイアーズっす」
「……はあ?」
「とう!」

威勢のいい掛け声と共に目の前に降って来たのは…赤也に、リョーマ?
何だこの組み合わせ。絶対、一緒に行動なんかしないであろう組み合わせじゃない。
仲が良いとか友達だとかそういうのが一切有り得ない二人組みが突如として現れたら無駄に驚くわ。
てか、何その服。えっと…それってコート?それともマント?それともまさかのポンチョ?

「……ダサすぎ」
「あ?」
「ヴァンパイアーズって、俺、アンタとコンビ組んだつもりないんスけど」

え?登場からわずか数分も経たないうちにいきなし仲間割れですか?(しかも私無視かい)
ああ、やっぱり有り得ない組み合わせで居合わせた結果がコレになるわけ、か。
コンビっぽく赤也が登場したことに嫌がるリョーマ。クールガイ。それに逆上しそうな赤也。あ、もう充血っ?
ええ?私、特に関わり無いままに喧嘩に巻き込まれちゃうの?ちょっ…待った待った!

ここは穏便に…逃げ出す!
ここはどうにか仲間割れを防ぐ!





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「け、喧嘩は止めましょうね!同じ服来た仲間じゃない!」

そうよ。何気に同じ服着て同じ八重歯付けたペアルックだもの。共通点が…
と、どうにか穏便に話をして落ち着いてもらおうかと思い、必死で話す私だけど、
ん?あれ?何か余計に不穏な空気が漂ってないですか?
どんより、何か一番触れられたくない部分に触れちゃいましたか私…

「たまたま同じ種族なだけで仲間扱いするつもり?」
「誰が好き好んでこーんな生意気なチビと――…」
「ソレ、俺の台詞なんだけど」

ぎゃっ!マジで只ならぬ空気を発し始めちゃったよ。バッサーってマントが、マントが!!
って…マントって布的なものであって、それ以外の何物にもならない、よね?
な、何かマントだったものが…羽根に変わってるんですけど!!?

「アンタ、潰すよ」
「潰されんのはそっち」
「えええええー!」

空中戦!?目の前で飛行機がアクロバットな動きをするアレに似た光景が…あわわ。
ヤバイ!私もろともクラッシュなばかりに接近してる!!!

「ご、ごめんなさい!!……って、」

ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起き上がった私は不意にベッドサイドのカレンダーを眺めた。
10月31日…今日はハロウィン、じゃん。まさか…何かの暗示なんかじゃない、よね?

★エンディングNo.02

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if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「ヴァンパイアーず、て名前はダサいと思うー!!」

……言い逃げ最強なり。
最初に名乗られた時からダサいとは思ってたんだよね。それはリョーマに賛同するわ。
けどさ、真っ向本人目の前にして言えるわけないじゃん。しかも、赤也の目は充血してるわけだし…
そもそも何さ「ヴァンパイアーず」って。今時の芸人さんでもそんなコンビ名は付けないわよ。
ダサダサもいいとこ。本当に。けど、自分の身が大事すぎるので…言い逃げます!

「あ、逃げた」
「……ダサい、のか」
「だから俺が言ったじゃん」

逃走する私の背後で何やら穏便に済みそうな、そんな雰囲気の会話が聞こえた。
けど、一度逃げ出した足っていうのは止まらないし、止めることなんか出来なくて。
振り返らずにただ直進して応接間の扉を開け、それ以上何も言わずに部屋を出た。

「な、何だったんだろう…あのコンビ」

絶対に一緒に居させてはいけない二人。
あの二人を一緒にしたいのならば間にもう一人必要になる…真田とか、ね。

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if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F 厨房・食堂】

えっと…ここは厨房かつ食堂ね。
調理したものをアツアツのまま出せるように出来た構造。
あわよくばマグロの解体ショーなんかも出来ちゃうみたいな、そんな広い空間。
ふむふむ…おんや?そんな場所で何やらムンクローブな団体が、居る。(何か黒いよ)

「ですから、ここでコレを入れてですね…」
「いいえ、ソレはまだ早いでしょう。いい加減になさいな」
「分からない人ですね。あなたも――…」
「何か言ってやって下さい、と言う。モメるだけだ断る」

……データ、データ、殺し屋。こわっ!
え?何で観月と柳と木手が仲良く調理実習とかしてるわけ?しかも壷!?(ハッ、乾は居ない)

「おや?どなたかいらっしゃってますね」
「ひっ!」
「丁度いい。彼女に意見を聞けばいい」
「ええ。それでも構いませんが…彼女に知識があるようには見えませんね」

えええ?何かムンクローブが迫って来るんですけど!(ね、ネクロマンサーか!?)
せ、せめて傍に来るんならフードは取って来て欲しいんですけど!ゾロゾロ…怖すぎる!

「まあ、俺から事情は説明しよう。実はな――…」

ムンクローブ・柳が間に入り、頼んでもないのに事情説明を開始。
どうやら、晩餐会に出す紅茶についてモメているらしく…ハチミツ注入タイミングが原因らしい。
観月は最初から紅茶をマイルドに差し出すべく、配る前から注入する派。
対する木手は個人的意見を尊重し、各自の趣味で注入させる派。(砂糖も可らしい)
くっだらない…けど、それは口に出来ないや。うーん…私の意見を言うならば、

確かに趣味があるので…木手策賛同
えっと、興味がないので…観月策賛同





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「興味がない、ですって…?」

ええ。全く以って興味ないです……って、え、嘘、観月ってばおキレになられてるっ?
木手と柳は涼しい顔で(ウチら無視で)次のステップ踏んでるようなんですが…

「え、あ、の…」
「興味がないのは百歩譲っても、それだけの理由で僕に賛同?」
「あ、あわわわ…」
「そのふざけた口から何から――…」

――摩り下ろして差し上げましょう。

マジですかー!!?
い、痛いのは嫌です!御免被りです!拒否です拒否!異議ありー!(錯乱)
あわわわしている私をよそに木手と柳は紅茶?が入ってる壷にハチミツ?を入れてて、
怒りを露にしてる観月はどんどん私の方に詰め寄ってて…え?片手に何持ってんの!?

「人間の紅葉卸は初めてですよ」
「えええええー!(も、紅葉卸になんの私!)」
「さぞかし美しい色になるでしょうね…」

ぎょええええ!そんな死に方、嫌すぎるんですけど!!

「か、勘弁して下さい!!……って、」

ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起き上がった私は不意にベッドサイドのカレンダーを眺めた。
10月31日…今日はハロウィン、じゃん。まさか…何かの暗示なんかじゃない、よね?

★エンディングNo.03





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「ほら…何でも君の言う通りにするわけにはいかないんですよ」

フフン、と何やら勝ち誇る木手。フン、とそっぽを向いた観月。そして…
特に気にした様子も無く紅茶?が入っている(らしい)壷からハチミツ?を遠ざけた柳。
……うん。絶対、このメンバーでは意見食い違いすぎて話になんないだろうね。
(大体、紅茶にハチミツうんぬんでモメてること自体が何とも言えないし)

「……まあいいです。とりあえずお礼に試飲させてあげますよ」
「えっ?(要らない)」
「どうぞ。遠慮なさらずに」

……うーわー、どう足掻いても避けられないカンジー。
仕方ない展開に顔を歪ませつつも「有難う」とカップに一杯の紅茶?を頂く。
勿論、私だけでなく観月も木手も柳も一緒に試飲みたいだけど…

「……あ、美味しい」
「ええ。そうでしょう?」
「さすがですね。唯一の取り得なだけあります」

ぎゃあ!そんな一言思ってても言っちゃダメだよ木手!そして頷くな柳ー!
余計な一言の所為でまた観月の顔が恐ろしいもんへとどんどん変わってく!
「ご、ご馳走様でした!」と、それこそ巻き添え喰らわぬ前にカップを返して逃げ出した。

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if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F 大広間】

広!何この部屋広すぎる!此処って…大広間?
今にも社交パーティーが開かれてダンスなんかやっちゃうカンジの部屋なんですけど。
うわー…シャンデリアもある。でも電気が点いてないもんだから不気味だ。(今にも落ちそう)

「……どうやらお客人のようだね」
「はっ」

ゲゲッ!何か凄い人たち居る!てか、何この部長倶楽部は!
おっきなロザリオ付けた手塚と西洋貴族な服を来た幸村と…マント跡部!似合いすぎだろマント!
え?何このバラバラなカンジの三人。でも少なくとも着てる服はそれぞれ似合ってるわね。コスプレパーティーか?

「随分貧相な女じゃねえか」
「失礼だぞお前」
「俺としては可愛らしくていいと思うけど?ねえ神父様」
「……俺に振るな」

マントをバッサーさせながら近づいて来た跡部とにっこり幸村と腕組みしたままの手塚…(しかも神父様って)
ほんと何この集団!何かのシンポジウムでもしてたのかしら…コスプレしたまま。
キング跡部とか幸村は別として、超ノリノリでこんな姿になるとは思わなかったわよ手塚!(ある意味見直した!)
と、色んなことに驚いていれば何やら三人はヒソヒソこそこそと話してる。異様な構図だ。
ちょっと長居してもアレだな…と思わずにはいられない光景にクルーリ旋回しようかと思えば、

「待った」

……呼び止められた。幸村から、穏やかな中でもしっかりとした声で。

「君にも意見を聞きたいんだけどいいかな?」
「は、はあ…(やっぱシンポジウム開いてた!?)」
「実はね――…」

吸血鬼代表(らしい)跡部と吸血鬼撲滅を掲げる人間代表(らしい)手塚が、
どうにかうまくやって行こうよ!をテーマとしたシンポジウム(幸村主催)らしく状況は…まあ芳しくないとか。
人の血を定期的に提供せよ、というのが吸血鬼たちの言い分で、それは無理だ、というのが人間たちの言い分(らしい)。

「で、だ」
「はあ…」
「双方の言い分を立てての何か素晴らしい解決策は無いだろうか」

そんなもん知らんわ…
あるっちゃあるような…





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
いやいやいやー…知らないよ、そんなこと。
そもそも何よそのシンポジウム。テーマ自体がおかしいっつーの。いつから跡部が吸血鬼になったって話。
確かに、たーしーかーに、そのお召物はとてつもなく良くお似合いではありますけど所詮演出っしょ?
そんな演出から訳分かんないテーマを持ち出されましても困るって。しかも共存って…ねえ。
外国に残る古いお話でも人間と吸血鬼(この場合、血を好む人間だけど)とが共存出来たって話は聞かない。
てか、ぶっちゃけ吸血鬼って残酷かつ残忍な連続殺人者をそう呼ぶことがあるだけで実際存在しないし。
シンポジウム議題がおかしいんだ。そう、それ自体がおかしいって私が抗議してやる!

「異議あり!」
「……異議?」
「異議よ異議、いーぎーあーりー!」

ここはバンバン机とか叩いて異議申し立てをしたいとこだけど机無いから地団太踏んで言っちゃうけども。
そんな下らないテーマを以ってこの三人(幹部クラス)が話し合いをしていること自体がおかしいことを真っ向伝えると、
ん?何か様子がおかしくなった。いや、跡部は元より変わった人だけど優しいはずの幸村も無表情さは変わらない手塚も、何か変。

「オイ、人間の犠牲は少ない方がいいよなあ」
「……ああ。出来れば居ない方が好ましいが」
「あの子だったら大丈夫なんじゃない。元気いっぱいだし」
「なら交渉成立、でいいか?」
「一人のために全ては捨てられない。成立だ」

な、何の話だ?100匹の羊飼いの話か?
100匹の中の1匹が居なくなって、1匹のためにリスクを負いながら99匹を残して探しに行くか、99匹を守るために1匹を見捨てるか…
え?今、そんなカンジの話なんかしてただろうか。手塚が、そんな状況下に置かれた羊飼いに見えて来たんですけど。

「君ならすぐに血を作れるだろう。頑張ってくれ」

は、はいい?血を作れるって…そんな意図的に頑張って血なんか作れるか!!
断固抗議しようと手塚の方に突き進もうとしたけど、その行く手を阻むのは…マント跡部っ!

「そこを退け跡部……って、」

ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起き上がった私は不意にベッドサイドのカレンダーを眺めた。
10月31日…今日はハロウィン、じゃん。まさか…他校合同のハロウィンパーティーとか予定してない、わよね。

★エンディングNo.06

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アトランダム/迷える子羊
「……定期的に輸血パックをあげたら?」

血なら何でもいいんでしょ?だったら輸血パックでどうだろうか。
勿論、貴重な血は無理だろうけどそこは跡部サイドが妥協する点だよね。言い分は聞くわけだからさ。
映画とかみたく首筋から毎度吸われたんじゃ痛いから手塚サイドは嫌がってると仮定してのことだけど。

「輸血パック、か」
「そう。血液凝固も起こしにくくなるよ?」
「バーカ、俺らがそんなヘマするかよ」
「するかしないかは別としてもいいんでしょ?パックで」

そこは絶対に生き血じゃなきゃいけない!っていうんなら決裂で終わるけどどうもそうじゃないみたいだし?
だったら輸血パックをお一人様一袋ってカンジでいいと思う。てか、何だこのシンポジウム…

「どうなんだい?」
「輸血パックなら…甘んじて用意しよう」
「……上等だ。これで交渉成立だな」
(成立、するんだ)

目の前で熱く交わされる握手を眺め、何だか腑に落ちないものを感じるけどまあこれでいいらしい。
とりあえずこれ以上関わっても良いことはなさそうだから適当なことを言いつつ私はエントランスへと戻った。

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アトランダム/迷える子羊

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