「今日は冷え込みますね」
「そーですねー」
「本土の方はホワイトクリスマスだそうです」
「そーですねー」
「……会話くらいマトモになさいな」
失礼な、適当だとはいえ返事してやってるだけ良しと思え。ストーカーめ。
たまたま、本当にたまたま出掛けた先で偶然にも居合わせるなんて狭い地域だからって早々有り得ないのよ。
友達にだって会ってないってのに何を好き好んで木手なんかと歩いてるんだろう。てか、何故木手があんなファンシーな店に!
「それにしても本当に偶然ですね」
「……それ、何回言えば気が済むわけ?」
「何回でも言いますよ、嬉しくて」
「……そーですねー」
盗聴器とか発信機だとかの類の物が仕掛けられてるんじゃないでしょうね私。
ヤツの言う偶然さが微塵にも感じられないんですけど!絶対、偶然を装った必然だと思うわよ。だってファンシーな店だよ!?
たまたま妹にクリスマスプレゼントを買いに出掛けて、それで木手だなんて有り得ない!絶対におかしい!
「折角ですからお茶にでも――…」
「行かない。買ったら直帰してやる」
「だったら簡単に買えないよう邪魔しますよ」
「邪魔されようがどうしようが一気に決めてやるわ」
「そうおっしゃらずに」
「いいや、絶対にダッシュで決めてやる」
……とはいえ、正直なところ目ぼしい物が見当たらずに店内をウロウロしてるだけ。
最近の子供は一体どんなのをやれば喜ぶわけ?お姉ちゃんには全く分からないんですけど!(てか、さっさと帰りたい)
「本来でしたら俺もこんな場所からすぐに逃げ出したいところですが、あなたが居るなら話は別ですね」
「……聞いてないんですけど」
「共に苦労しますよね、妹が居ると」
ん?何かしれっと面白いこと言わなかったかい、この殺し屋さんは。
「……木手、妹が居るの?」
「ええ。なかなか手強いですよ」
プッ、と吹き出しそうになったのを慌てて堪えた自分が居た。
だって木手の妹ってどんなんだよ!全然想像出来ないんですけど!と顔を背けながらビジョンを思い浮かべて…やっぱりプッとなる。
てかそれでこんな店に来てるわけだ。プレゼント買ってあげるなんて優しくて素敵なお兄ちゃんでちゅねーって笑ってやりたい。
「それでこんなところに…ぷぷっ…居たわけね」
「ええ、じゃなきゃ来ませんよ」
「ぷぷっ…で、プレゼント決めたわけ?」
「いいえ、何を欲しがっているのか分かりませんからね」
あーやっぱり悩むところは同じ、かあ……って、馴れ合ってどうする私!さっさと選ばないと妙な誤解されるわ!
ちょっと正気に戻った私はとりあえず手当たり次第商品を手に取ってうーんうーんと悩む。何か、こうしっくり来ないのよね。くそう。
「こういったものはどうなんでしょうね」
「あー…ぬいぐるみ系は最初だけしか大事にしないわよ」
「なるほど。でしたら小物なこういうのは…」
「ガラス系は割る。それに飾るだけでしょ?」
「難しいですね…」
って、何で私の横で一緒になって悩んでるんだよこの男は!
「木手!アンタねえ――…」
「こういったヘアピンなら使ってくれそうですか?」
「え?あ…ソレいいかも」
「でしたらコレにしましょうかね」
「あ、私もそうしよ……って!」
結局、何やってんだ私!結局仲良く買い物してる図になっちゃってるじゃん!
可愛らしい装飾の付いたヘアピンを片手に一緒にレジに並んでるとか絶対誰にも見られたくない!
「あなたにはコレでいいですか?」
「……は?」
「栞です。使いますよね?」
「はあ?」
私の横のレジで会計をしてる木手は何気に「私の分」とやらも一緒に買って…
「そちらの彼女にプレゼントですか?」
「そうです。受け取ってくれるといいんですが」
とか抜かしやがった!!しかも、絶対的に受け取り拒否が出来ないようその場で差し出して――…
「使って下さいね」
「な…っ」
……絶対、確信犯だ。この男!
-プレゼント-
2010.11.25.
←
[ 戻る / 付箋 ]