テニスの王子様 [DREAM] | ナノ
Days

この巷に蔓延ってるのは大体同じカボチャだ。
何を見てもそう思うし、何を言われてもそう思う。俺にはいつだって「よくしゃべるカボチャ」とそんな風に見える。それならそれらしくしてりゃいいのに、そのカボチャたちは「いつかシンデレラになれる」と言わんばかりに着飾る。おそらく馬車になる確率も少ないのに。

そんな中でもニンゲンは居た。多分、この巷では唯一のニンゲン。
よくしゃべるカボチャに混じったニンゲンはカボチャたちと何ら変わりはないが俺にはニンゲンに見えた。よく笑い、よく話すニンゲン。ただ、俺にはその視線を向ける事のないニンゲン。向けたとしても何事もなかったかのようにすぐに視線を逸らす。まるで興味が無いといった具合に。


「おい」
「ん?何?」

意味もなくニンゲンに声を掛けてみたがカボチャと反応が違う。
笑ってはいるがカボチャたちと同じような反応を俺にも示していることが分かる。とりあえず適当な会話をすればニンゲンはまたカボチャ畑へと戻ってしまった。だけど、やはり俺にはカボチャには見えなかった。


「おい、ノート提出は今日までだ。さっさと出せ」
「あ、はーい。お手取りしてごめんねー」

「悪いが資料を返してくれねえか?」
「あ、うん。跡部くん忙しいもんね。任せて」

「これから生徒会があるから担任にコレを渡して来てくれ」
「了解」
「いつも悪い」
「いいよいいよ。気にしないで」


ニンゲンは嫌な顔一つしない。いつも同じ顔で俺と接してカボチャ畑へと戻っていく。
畑の中でカボチャたちに何か言われる姿も見たが、彼女は特に気にした様子もなく、特に俺を意識した様子もない。
むしろ、意識しているのは俺だけ...そう思った時、ふと気付いた。


カボチャの中のニンゲン


彼女はどうやら魔法使いらしい。
魔法をかけられるのがまさか自分だとは思いもしなかった。

2012.09.24.



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