テニスの王子様 [DREAM] | ナノ
Halloween.

「あ、忍足!」
「お、ゆいやん。丁度エエとこで会えた」

と、忍足は随分とげんなりした様子で閉じかけたエレベータの中に駆け込んで来た。
部活帰りでお疲れだとは思うけどソレとはまた少し違ったげんなり感に何事か?と思った。部活帰りの忍足がこんな顔してたことがあったとしたら...こないだの彼の誕生日かバレンタインくらいなんだけど、今日は何でもないフツーの日だ。

「ほんま丁度エエタイミングやんなあ」
「え?どうしたの?」
「実はな...」

随分と腫れ上がったテニスバックとスクールバックを床に置いてパカッと御開帳。すると中には無造作に突っ込まれたお菓子がバラバラと入っていた。そりゃもう所狭しと飴とか飴とかクッキーとか飴とかが入ってる。

「ジローが菓子貰いよったんはええんやけど数が膨大でな、男テニ全員でお引き取りするハメになったんや」
「ええ?膨大なお菓子が!?」
「せや。部室がもう甘い匂いで気持ち悪うて最悪やってんで」

ああ、それでか。忍足は甘いもの好きじゃないから。
それにしても忍足でこれだけの量を詰め込まれてるんだから部室は相当な数あったんだろうと思う。いやーさすが芥川くんだ。見ててついつい私でさえもお菓子あげたくなるくらい可愛いもの、だからそれだけの量が集まったんだろうけど。

「ゆい甘いの好きやろ?もろてんか」
「うん。貰う貰う」
「ほな部屋寄らせてもらうな。出すのも一苦労やし」
「どそどそ。相変わらず汚ないんだけど」

丁度、エレベータが私の部屋の階で止まった。
御開帳されたバックをささっと片付けた忍足は私の後に続いて部屋に入り、何故か「お邪魔します」ではなく「ただいま」と言ったんで部屋に戻りたてで靴とか脱いでたんだけど「おかえり」と言っといた。変なカンジだ。

部屋の奥に入れば忍足はいつもの場所に座ってカバンの中に詰まってたお菓子をバラバラとテーブルの上へと置いてく。
飴とか飴とかクッキーとか飴とか...で、チョコだとかスナック菓子だとかもダラリと出現する。山だ、山になってるよ。

「本当にすっごいね」
「これもジローの所為や。ハロウィンやからってお菓子せがみよったんが悪い」
「あ...そういう日、か」

ハロウィン。そうかハロウィンだからお菓子なんだ。無縁だけど立派なイベントだ。
そりゃ芥川くんに可愛く「Trick or Treat」とか言われた日にはお菓子あげても仕方ないわ。私だって話したこととかないけど言われたらあげるよ。小梅ちゃんとか酢コンブとかしかないけどさ。

と、不意に何か便乗したくなってまだまだお菓子を探してる忍足に向かって言ってみた。

「Trick or Treat!」
「.........は?」

よし、満足した。

「言ってみただけ。あ、お菓子持ってるから言ってもオーケーだったね」
「ほなら俺も...Trick or Treat」

ゲッ。言い返すかなフツウ。
ちょっと焦ってポケットの中を探したけど小梅ちゃんとか酢コンブとかが、ない。

「な、ないんですけど酢コンブ!」
「.........それお菓子て言うてええんやろか」
「小梅ちゃんとか酢コンブは立派なお菓子です!」

バシッと主張するも肝心なものがない。
それこそカバンの中身を引っくり返して探していると忍足が苦笑しながら言った。

「イタズラせえへんから俺も一緒に此処のお菓子食うてもええやろか」








一緒にお菓子を食べましょう。



「あ、あったよ酢コンブ!」
「そない全力で探さんでも...」
「さあ食べて食べて!お菓子の酢コンブ!」

2012.10.25. 企画イベントより


(15/17)
[ 戻る付箋 ]

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -