気付けばふと目で追って、熱くて熱くて蕩けたサインを知ってか知らずか見ていないふり。
君の視線を独り占めするブラウン管が憎い、憎い。
らしくないよね、焦ってるよ。無機物にまで嫉妬なんて馬鹿馬鹿しくて、初笑いはこれで決まり。ボクの醜い、下らないヤキモチ。有機物ならきっとボクが一番だよね?
なんて、発想がどうかしてるけど今はそれどころじゃない。
一心に豪炎寺くんの視線を浴びるあの箱は、笑ったり歌ったり泣いたり、色気のひとつもないったら。あれよりボクのほうが、……ついには番組にまで嫉妬する始末。相手にしてくれないキミが悪い。
熱い熱い。くらくらする。まだ触れてもないのに、キミに触れられる被害妄想だけでいつでも何度でも絶頂状態。病気じゃないのこれ。
温暖化なんて微塵も配慮しない設定温度の灯油ストーブのせいでも、うたた寝しそうな温もりの電気カーペットでもない。ましてやこたつなんて、ホント邪魔でしかない。
熱いよ、熱いんだよ。
全部全部全部、キミのせいでいいよね。
気紛れに覗かれた瞳が語っているはずなのに、意地悪にほくそ笑んでまたブラウン管の世界を映していて。
そんなに好きなら画面突き抜けていっちゃえばいいのに。
嘘うそ、やだよ。一人はやだって、あの雨の日も焦って大声出しちゃったよねボク。懐かしくて恥ずかしい。
たぶん、ここで耐えきれなくなったら、豪炎寺くんはきっと待ってましたと言わんばかりに、胸が締め付けられそうな憎たらしい笑顔をボクに向けるんだろうな。
それもいいから、早く早く。
「欲しいなら言ってみろ」
切羽詰まって喉まで出かけた言葉を涙目で呑み込んだ。
やっぱりキミはお見通しなんだ。
そうでもないか。今のボクは誰がどう見たって
「ご…えんじく、んっ」
さらさらと指通りのいい髪を掻き分けて、熱を孕んだ指はじんわりと気持ちよくて、電気が走ったみたいに触れたところからぞくぞくする。
「年明けはまだだぞ?」
まだ余裕のキミがニタリと笑う。誰かに似てると思ったら、鬼道くんが司令塔ぶりをまさに発揮しているその表情に少し似ていた。使いどころによってこうも印象が違う顔になるのか。
鬼道くんのドヤ顔は頼もしいのに、今のキミのは気持ち悪いくらいに生き生きしていて別人みたい。
そんなキミにまた動悸が激しくなるなんて、もうやだこの心臓。
「待てないよ…」
絞り出した精一杯の懇願は、こたつ布団の擦れる音に掻き消えた。
遠くで聞こえる除夜の鐘にも負けそうな声をちゃんと拾うキミだって、
(我慢してたんでしょ、ねぇねぇ!)
(………うるさいな、雑煮が冷めるぞ)
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