このまま雨に溶けてしまいたいと、手元の傘を閉じたままで立ち止まる。周りの音は全て雨音で掻き消され、いつの間にか心地好く感じてきた。髪にも肌にも制服にも水が滴り本当に私は水になってしまうんじゃないかと思ったら、段々と寒く感じてきて、不安になってきて、ついに私からも水が流れてきた。あ、私、水になっちゃった。
「…馬鹿」
視界を覆った青。それは差し出された傘だった。
「しゅう、ご…」
「帰るよ」
「私ね、水になっちゃったのかと思った」
「水になったら困るから、迎えに来た」
きっと明日は晴れるだろうと君が言ったから
(傘の中でもぽつり)
title:ポケットに拳銃