「お、わ、雪だ」
「おーおーおー積もったなあ」
寮の前は昨晩の雪で一面、白。雪国のそれ程ではないけれど私達には十分だった。
「時間あるかな…」
「ん。まだ大丈夫」
ちら、と彼を見れば、察してくれたようだ。道の端の雪を集めて雪だるまを作る。分かりきったことだけど、すごく冷たい。
「ひゃー、もう感覚無い…」
「手袋は?」
「やりづらいから取っちゃった。…でもほら、出来たよ」
手のひらサイズの小ぶりな雪だるまを差し出す。すげーな、と彼は笑い雪だるまに指を滑らせる。そしてそれを手に取り、また道の端にちょこんと置いた。
「帰りまで残ってるかな」
「無理だろ。賭けてもいいぜ?」
「いいよ」
絶対に自分が勝つ賭けしかしてこないのはいつものこと。私も負けるのを分かっててそれに乗る。
「手、貸して」
「あったかーい」
「そのためにずっと見てるだけだったんだつーの」
「どーも」
雪原を染める春になりたい
(ある寒い朝のワンシーン)
title:ポケットに拳銃