ただいま、とドアを開ければ部屋からおかえりーと声が聞こえた。重い鞄をやっと下ろして本日何度目か分からない溜め息。職場で終わりそうにない仕事を家に持って帰ってきたのはいいが、疲れてすぐにでも寝てしまいたい。


とりあえず資料を広げるためにテーブルに乗っていたカップを端にずらす。「あーごめんごめん」と拓矢がカップを持ち上げたので「別に置いといても大丈夫だから」と言うと「いーよいーよ。テーブル全部使っちゃえ」と拓矢が言ったのでそのお言葉に甘えた。




いざ取り掛かるとあっという間に時間は進んで、一段落ついた頃にはもう日付が変わってしまっていた。脱力しテーブルに突っ伏すとコトン、と音が伝わってきた。顔を上げるとそこにはマグカップが一つ、ココアが入っていた。




「お疲れさん」




拓矢が隣に腰を下ろしたので「ありがとう」と一口啜った。私好みの濃さのそれは一緒にいた時間の長さを実感させる。拓矢はぴったりスプーン三杯だったはず。最近はこうやって私がココアを入れてもらうことのほうが多い。ゆったりとしたこの時間は私の疲れをだいぶ癒してくれる。もしかしたらこれのためにわざわざ仕事を持ち帰ってるんだろうか。自覚は無いけれど。







「もー寝る?」


「いや…もう少しやる。でもちょっと休憩。ブレイク」


「そーやってまた寝るなよ?ベットまで運ぶの俺なんだし」


「寝ーまーせーん」






ちょっとひといき
(ありがと、がんばるよ)







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