あらよーっと階段を三段飛ばしで下ってたら、落ちた。頭を打って意識が飛んで気づいたら病院だった。星月先生が椅子に座って寝ていた。「あー」とか「うー」とか言ってたら星月先生が起きた。「いつでもどこでも寝るんですね」と言ったら「大丈夫そうだな」と安心したような呆れたような顔をして、病室から出ていった。
携帯を取ろうと体を動かしたら結構痛くて、ドジったっていうレベルじゃないなあ、とちょっと反省。取り敢えず錫也に電話を掛けた。
「もしもし。錫也?」
『ああ、大丈夫なのか?』
「全然大丈夫ー。ちょっと頭打ったくらい。入院しなきゃいけないみたいだから荷物をお願いしたいんだけど」
『入院は大丈夫の内に入ってるのか…』
「あは」
『わかったよ。何か食べたい物あるか?』
「やったー。じゃあ今日はおにぎりと唐揚げと卵焼きがいいな」
『遠足か』
電話を切ってぼーっとしてたら、いつの間にかまた眠っていた。階段から転がり落ちる夢だった。
ゆっくりと目が覚めて、また誰かいる?と思ったら哉太だった。
「おはよう。錫也は?」
「おはよう…じゃなくてよ。錫也なら飯がまだだと」
「そっか」
「お前何スッ転んでんだよ」
「いつもは大丈夫だったんだけどね。今日は運が悪かったの」
「ったく運とかそんなんじゃなくて、気を付けろよな」
「次からはね」
哉太ならもっと身を乗り出してくるかと思ったら意外と落ち着いていた。ちょっと寂しかったりする。
「お前が入院とか…ウケるわ」
「ちょっと…笑い事じゃないよこれ」
「そうだな」
哉太の真顔がこっちを向く。
「全っ然笑い事じゃねえわ」
違う。哉太は落ち着いてなんかいなかった。私の心配や自分への憤りを必死に抑えていた。
「ほんとに抜けてんだよお前」
「うん」
「連絡も錫也にしかしねーし」
「ごめん」
「あいつも何か無駄に冷静だし…俺ばっか感情的になんのもアレだし」
「…哉太はもっと心配してくれるかと思ってた」
「充分心配してっけど」
「もっと行動に表す感じで」
ん、と両手を差し出すと困ったように哉太は笑って優しく、でもしっかりと抱き締めた。
―ただ抱き締めて―
(ぎゅっとぎゅっと)
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会話多かったかな…