大学に入って、周りの環境がガラッと変わった。もちろん関わる人も。私以外の女の人と接することなんて殆ど無かった。だから気づかなかった、いや気づくはずがなかった。

梨本君がモテることに。



「き、今日ね!朝、梨本君と同じ電車だったの…!」

「なにそれー羨まし!通りでご機嫌なのね」



もうそんな他人の会話を何度聞いただろう。まだ私達が付き合っていることは広まっていないらしく、梨本君が何人かに告白されていることを知ってる。粟田君から聞いた。

明るいし、面白いし、そりゃ人気者になるよね。モテるよね。可愛い子も沢山いるから、もしかしたら…いや、そんなこと考えちゃ駄目だよね。私は彼女なんだからしっかりしなきゃ!

と、決意をしたのが歩いてる最中で、注意がいかず曲がり角で人にぶつかってしまった。



「ご、ごめんなさいっ…」

「大丈夫…て、あ、名字さん!」



初対面なのに名前が知られてる。誰だろう、この男の人。梨本君の友達かな?



「あのさ…、君って彼氏とかいるの?」

「はい?」



いやいやいや、ちょっと待って。この流れは不味くないか。



「俺…入学したときから、君のこと…」



ごめんなさい。迫って来ないでください。やめてください…っ



「ちょーっと…手、離してくれねーかな」



間に入ってきた彼の背中にひどく安心した。そして彼はあくまでもいつもの調子で話す。



「こいつは、名字は俺のだからさ」


そう、声はいつもの調子。だけどその目は鋭かった



「悪いな。そういうことなんで」



私の手を取り、悠々と梨本君は歩いていく。すれ違う人、主に女の人が驚いて振り返ったりしている。



「何にもされなかったか?」



人がいない所に着くと、梨本君は立ち止まり、心配そうに聞いてきた。



「なんもされてないよ。大丈夫」

「そっか…あー……そっか良かった」



彼はなんだか落ち着かない動きをし、頭を掻きながら言う。



「名字は高校の時から可愛いと思ってた。それは唯一の女子だからっていうのがあったからだと思ってたんだけど…大学入って、やっぱお前は他の人よりも可愛い…なーって思ったわ…けで……」



彼はみるみる紅くなる顔を逸らし、ついには手でその顔を覆った。



「男はお前のこと好きな奴いるし、女はなんか告白してくるし、それでお前を不安にさせてるだろうし、ほんとに俺でいいのかってすっげー不安で…」

「梨本君は…!私の自慢の彼氏だよ!」



顔を覆う手をそっと取り、私の気持ちを伝える。



「私も梨本君がモテるし、可愛い女の人も沢山いるから、凄く不安だったの。でもね、さっきみたいに梨本君が言ってくれてそんなのどっか行ったよ」

「名字…」

「私からは絶対離れたりしないから」



言ってから私も顔が真っ赤になってしまい、二人して笑った。頬に手が添えられ、彼の顔が近づくと、私は幸せを噛みしめ目を閉じた。










―お互い様なんです―
(好き、大好き)



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カッとなって書いた
後悔はしている
長い。臭い。
簡潔に、かつ素敵な文章が書けるようになりたい



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