今回のテストも余裕だった、と言いたい。しかし、結果は残念なことに満点ではなかった。担任の先生も、クラスの奴らも、きょとんとした眼差しで俺を見る。俺だって人間だからな、間違いの一つや二つはあるんだ。
「あの白竜が」
「珍しいこともあるんだなー」
「何かあったのか?」
ひそひそと話す声も気にならない。少し悔しさはあるが、この結果を招いたのは俺自身の力不足だったことだ。これをバネに、次のテストを頑張ればいい。
…思えば、勉強しようと机に向かっても、集中力がすぐに切れる事が多々あった。その原因は彼女だ。あの日、エンシャント女学院の森で彼女と出会って以来、じわじわと彼女の事が気になって気になって仕方がない日々が続いた。
また、会いたいなどと、思ってしまう。日に焼けた肌と甘く高い声。その大きな眼で、また俺を映してくれないだろうか、と。
「シュウ…」
「呼んだ?」
「っ!?」
ぼそりと呟いたそれに返事が来た。後ろを振り返れば、周りをキョロキョロしながら近づいてくるシュウの姿。
ここはまだアンリミテッド学園の敷地のはず。何故シュウがここにいるのか。
そんなことよりも、いや、他にもたくさん疑問点はあった。
「暑いね、今日も」
「ああ。それよりシュウ、どうしてここに」
「キミと色々お話をしようと思ってね。あ、でもここはまだアンリミテッド学園の敷地内だから、あんまり堂々とできないね」
「それなら、‐」
それなら、いい場所がある。少し無理矢理にシュウの手を引いて、その場所へと連れて行く。
誰も知らない、俺だけの、練習場。
この練習場の存在を知っているのは今じゃ俺と剣城だけだろう。学園から少し離れたところにあるそこは、人目を気にせず話ができる。
「本当に誰も来ないんだね…静かで、いい場所だ」
「とっておきだからな」
「あ、そういえばさ、白竜は夏休みになると帰省しちゃうよね?」
シュウはどこか悲しそうに呟いた。