※小説に含まれる描写がちらほらありますのでお気をつけて!
「エスカバ、君にイイコトを教えてあげようか」
「いや、遠慮しとく」
「何で!きっと役に立つよ?ね、ほらほらほら…」
ミストレの"イイコトを教えてあげる"という一種の魔法の呪文はもう聞き飽きた。こいつと知り合ってから何度聞かされてきた言葉なのか。それはきっと指で数える、いや、指じゃあ数えられないくらいだろう。ミストレは俺の姿を見つけると、いつもニコニコしながら近寄ってくる。まあそうなると必然的に俺らの周りに人が寄ってたかってああウザい。
「女の子にモテる方法。どう?知りたいだろう?」
「興味ねーよ、お前も暇だよな…」
「…まさかとは思うけどエスカバってホモ?」
「殴られたいのかコラ」
ああ、この女顔をどうにかしてくれ。いつも多数の女を引き連れて歩いているミストレとは違って俺は、野郎共を引き連れて歩いているわけだがホモって何だよ。あいつらと恋愛なんて一度も考えたことねぇし。というよりも、恋愛するためにここに来たんじゃねぇ。俺は将来の事もちゃんと考えてるわけだ。
だいたいこの年で恋愛とかませてるだろ。…とにかく俺はまだ恋愛なんて必要ないと思っていたけど、突如目の前に現れたミストレの整った顔を見て驚き、座っていた椅子ごと転倒してしまった。
「ねぇエスカバー、エスカバ?あっはは、ダサい」
「……おい、退け、」
「女の子がいらないホモなエスカバには、オレみたいな子がピッタリなんじゃないかな!」
「は、…?」
「だからオレの恋人になってよ」
「お前…色々大丈夫か?」
「オレってよく女の子みたいな顔って言われるけど、中身はれっきとした男だしね。うん、君にピッタリ!」
勝手に話を進めて一人で盛り上がるミストレにもはやついて行けない。俺は下からただポカンとミストレを見ることしかできない。疲れて反論すらめんどくさくなったから。
俺の上でぐだぐだと喋るミストレの言葉も聞き流していた。
いつの間にかはだけていた制服。グローブの纏っていない冷たい手が胸板を撫でる。
「お、おい…ふざけるのも大概にしろっ」
「この関係…バダップには、内緒にしておこうか」
「っ、つ、…!?」
ミストレの目がギラギラしている。こんな至近距離なんて滅多になかったから気づかなかったけど、ミストレの下睫は嫌いじゃないな。ゆっくり目を閉じて、今はされるがままにしておくか。
今日だけだ、今日だけ。
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ミストレちゃんとエスカ。