ジャンルカの言葉が精神を揺さぶる。何故だろう。たった一言に引っかかって練習も集中出来ない。このままじゃ駄目だと思い、適当な理由をつけて宿舎の医務室を借りて少し休憩することにした。
選抜メンバーとして選ばれたオレ達は、イタリアの各地から飛んできているわけで、皆が皆同じ地域に住んでいるとは限らない。FFIが終わった後の事なんてまだ考えてなかったし(だってまだ予選だし)…なんてグダグダ考えたところで解決するわけもない。
普通なら良かった。普通に言ってくれたら良かったのに、ジャンルカはすごく切ない表情だった。それが、一番引っかかる場所。まるでジャンルカは、オレと離れたくないとでも言うような‥そんな表情だった。
(離れたくない?オレと?何で?)
疑問点が積み重なって、わけがわからなくなって。
とりあえずオレは医務室のふかふかなベッドに寝転んで、グラウンドから聞こえるフィディオ達の声を子守歌に夢の中へ落ちた。
次に気がついた時はもうみんなが練習を終えていて後片付けをしている時。オレは慌ててグラウンドへ向かおうとするがそれを阻止されて止まる。ジャンルカだった。
「お…、ジャンルカ、おはよ…」
「あ、ごめん…つい反射的に…」
掴まれた腕をパッと離して、気まずそうに視線を逸らす。どこか焦っているのがオレにも伝わってくる。もしかして、とは思ったけどそのもしかしてだったり。
いきなり肩を掴まれて、ジャンルカはオレをがっちりと固定する。本当にこいつは何がしたいんだろう。
「やっぱり、FFIが終わったら…帰るんだな…」
「うーん…家も手伝いたいし…前にも言ったけど、住む場所もないし、」
「住む場所なら、オレが、何とかする…」
「そう言われても……じゃあ家の手伝いは…」
「ならオレがお前について行くさ」
「それじゃお前の夢はどうするんだよ…」
オレにもジャンルカにも目指している夢があるから、いずれは別々になるとわかっていた。
何事も思い通りにならなくて、ピリピリした空気が流れ込み、ついにはお互い黙り込んでしまう。
「オレだって…家の手伝いが無ければジャンルカと一緒にいたい…」
「…マルコ…」
「けど…先にやるべき事がたくさんある。まずは大会で優勝して、それから…―」
言葉にはしていないけど、本当はオレだって離れたくない。だけど現実が甘いはずもなく。
この気持ちが恋だと気づくのはいつだろうか。