「は?何、まさかお前も女装に目覚めたの…?」



いつものように練習が終わって、後片付けをしている時だった。ジャンルカに呼び出されて、何かと思えば化粧がどうのこうのと言われて、ジャンルカまで女装に目覚めたのかと勘違いしてしまいそうで。
正しく言えばオレをメイクアップしてくれるとかなんとか。いきなり何だよ、と思いつつも疑問を抱きながら後片付けを続けた。


午後になってジャンルカをオレの家に招き入れて、とりあえず部屋で寛いでおくように言ってオレは姉ちゃんの部屋から道具箱を持ってくる。
箱を開けて中身を見たジャンルカはその化粧品の多さに目を見開いていた。


「どれでもいーよ。適当に使って、あ、オレがお前とデートするときに使ってるやつはこれとこれと…」


ジャンルカの手が頬に触れて、ピクッと反応してしまう。今まで何度となく頬に触れられてきたけれどやっぱり慣れないもので。

パウダーをポンポンと塗って、基本的なことをする。ここまではオレもやってること。シャドウやらチークやらを塗りたくられて、頬の上を滑る筆がくすぐったくて顔が強張った。


「大体こんな感じ?」

「おーこんな感じ!」

「そっか、後は唇だな」


ピンク色のリップを取り出して、それを唇の形に沿って丁寧に塗っていく。人に塗られる時は何故だか目を閉じる癖があり、またいつの間にか目を閉じていた。
ふわりと、塗り終わった直後に柔らかい何かが触れて、驚いて目を開けるとジャンルカが。


「な、なな、お前…!…はあ…」

「我慢出来なかった…マルコが可愛すぎて…ごめん、もう無理…」

「もう無理の意味がわかんねーよ…まったく…」


顔を赤くしたジャンルカが、視線をそらしている。いつもやられてばっかりもまあ嫌なもので何か仕返しはないかと考えた結果、道具箱から違うリップを取り出してそれを塗り、そっとジャンルカに近づいてそのまま頬にちゅっと一瞬だけのキスをする。

頬にくっきりと唇の後が残って、なんだか嬉しくて、笑いが零れた。






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化粧に興味津々なジャンルカがマルコをメイクアップしたいという話でした。


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