時が流れるのは早い。
今まで何度となく感じた事だ。
FFIもいよいよ決勝トーナメントとなり練習も多くなる。大会が始まった頃よりもチームメイトとの仲も深くなったし、今じゃみんな家族みたいな存在だった。
「今日の練習はここまでにしよう」
フィディオがみんなに伝令をかけると、みんなが口々にお疲れ様と行って後片付けを始める。蹴り散らしたボールを回収してカゴに放り込む作業をしている途中、ジャンルカに呼び出される。
今日は午後からの練習はないし、この後の予定もない。真っ直ぐ家に帰って店の手伝いでもしようと思っていたから、ジャンルカからの誘いはあまり乗り気ではなかった。
それでも誘いを断らなかったオレはお人好しなのかもしれない。
「で、さ。話って何?」
行く宛もなかったからジャンルカの家に招かれて、まるで自分の部屋みたいにオレは遠慮なくジャンルカのベッドに腰をかけた。
ジャンルカは持っていたマグカップをオレに渡すとデスクの椅子に座って、何か言いたそうな表情をして。空気がずっしりと重さを語る。
「FFIが終わったら」と言うだけ言ってまた黙り込むジャンルカ。何かを思いつめているようだった。
「何かあったのか…?」
「いや…まぁ、特には…」
「FFIが終わったら、の続きは何?」
「………………」
コトン、と音を立ててマグカップをデスクに置くと、ジャンルカがやっと話の続きをする。
「お前は、どうする」
「…は?何が?」
「だから、FFIが終わったら、お前は…帰るのか…?」
大会が終わったら実家に帰って店を手伝おう。そうは考えていた。
サッカーに出会う前はずっと親の手伝いをしていた。小さい頃から仲良しだったアンジェロと興味本位で始めたサッカーに見事のめり込んでしまいこうなってるわけだが。
オレとジャンルカが住んでいる地域は離れている。ジャンルカの住んでいる地域はオルフェウスの宿舎とも近場なのでFFIが終わっても今となんら変わりはないと思う。でもオレはかなり遠い場所から来てるし、大会が終わると帰郷命令が下ると思う。こういうのもあれだけど結構旅行感覚だったり。
「んー、まあ帰る、かな…家の手伝いとかあるし…今は宿舎があるから生活出来てるけど大会が終わったら宿舎も使えなくなるし生活出来ないだろ」
「…そうだよなぁ……」
「ジャンルカ?」
口には出さないけど表情ですぐわかる。ジャンルカはぼんやりと窓から空を眺めて、腑に落ちないというような、そんな感じの。
素直に離れたくないと言えない性格だということはもうわかっているから。すぐにわかった。
知らないうちに強がっていたけど、やっぱりそれは上辺だけであって本当はすごくすごく寂しい。なんて。