久しぶりに帰った実家はとても暖かくて、心が弾む。
しばらく使われていなかった自室の机が少し埃まみれで、というより部屋が全体的に埃臭い。ずっと練習で宿舎に寝泊まりしていたため、実家に帰るなんてなかったし汚れて当然だった。
机の上に置かれた写真立ても、埃のせいで曇っている。ふぅっと息を吹きかけてティッシュで拭き取ると、現れたのは自分と、ムスッとした表情のジャンルカ。会って間もない頃だったかな。


「懐かしいな…」


ジャンルカと初めて会った時、性格も好みもまったく違うしこいつとは絶対にやっていけないなんて思っていたけれど。
そんなこともあったなぁ、なんて、もうほとんどが思い出話になる。


「あ、そうだ…ジャンルカがクリスマスプレゼントくれたんだ…開けてみよう」


練習が終わった後、ジャンルカがクリスマスプレゼントを渡してきたのでそれを受け取った。去年のクリスマスはまだそういう関係でもなかったし、プレゼント交換とか、クリスマスにさして興味がなかったから。
可愛くラッピングされたその袋はまるで女の子用のプレゼント。リボンを解いて包装を剥がすと、中に入っていたのはイヤーマフと普通のマフラー。マフラーの端にくっついて何やらメモ書きが一緒に出てきた。おそらくジャンルカからのメッセージ。


「"メリークリスマス。マルコは髪の毛が短いから寒いだろうと思って耳当てとマフラーをプレゼントしてやる。風邪引くなよ"…上から目線かよ…」


綺麗に書かれたジャンルカらしいメッセージにくすっと笑いながら、もこもことしたマフラーを巻いてみる。ついでにイヤーマフもつけて、クローゼットの鏡で姿を確認してみた。
その時、急に携帯電話が鳴り響いく。


"下降りてこい"


短文メール。返信する前に部屋を飛び出す。だけど、何かを思い出してまた部屋に戻ってくる。


「へへ…この写真見せてやろ…」


写真立てから写真を抜き去って、ばたばたと階段を駆け下りていく。玄関のドアをあければ、白い息を吐くジャンルカの姿。


「マルコ、お前…っ」

「ジャン!!この写真見て見ろよ!丁度去年の今頃のオレたちだぜ」

「じゃなくて、プレゼントもう使ってるのか」

「ああ、だって寒いし!ジャンからもらった初めてのプレゼントだし…な!」

「…ふん、…あ、マルコ、雪だ…」


黒い空から真っ白な雪が舞い降りて、鼻の頭に落ちる。
冷たくて、じわりと溶ける雪。暗くて静かな夜を、真っ白にした。


「イヤーマフ、貸すよ。耳真っ赤、つらいだろ?」

「ああ…オレは髪の毛あるし」


ジャンルカが耳にかけている髪の毛を下ろしたけれど、やっぱり寒そうだったからイヤーマフをつけてあげた。
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