「なあジャンルカ…」
「ん?」
「本当にオレでいいの?」
「…んー…」
「不安になるような曖昧な返答をするなって…」
ぼんやり夕日を眺めながらジャンルカに寄り添って話をしていた。
さっきまで泣いていたから少し目が腫れぼったい。
「お前、女装止めるなよ?」
「いきなり何だよ…」
「趣味なんだろ?」
「…うん、まあ…」
ジャンルカは眉間にシワを寄せて何か考えているようだった。正直言って、女装が日課になっているオレに女装を止めろと言われても、趣味でもあるしそう簡単には止められるはずもなく。だけどジャンルカに言われたら止めるつもりでいたのに、それはまさかの言葉だった。
「あ、そうだ…マルコ、ちょっとこっちきて」
「…?」
「魔除けのおまじない」
ニヤリと笑うとオレの首筋にかぶりつくジャンルカ。驚いて変な声が漏れるけど、その後にチクリと痛みが走った。オレの首筋に痕をつけやがった。しかもよく見える場所に。
「これで女装しててもナンパされないだろ。まあ女装して出掛けるならオレを呼べ。必ず。」
「このやろー彼氏気取りか!」
「マルコはオレの"彼女"じゃないのか?」
「う、え…彼女って…」
「なんだ、やっぱりそういう関係だったんだ二人共」
「「っ!?」」
口元を結んで笑うアンジェロがいつの間にか目の前にいた。
繋いだ手に近すぎる距離、そして首筋の痕。バレバレの状況。
「違うアンジェロこれはっ」
「大丈夫!ボク秘密事はちゃんと守るから!」
「「……」」
「とりあえずおめでとう!」
満面の笑みで祝福されて、アンジェロはやっぱり天使みたいだと思った。
じゃなくて、早速チームのメンバーにバレてしまって、これからの生活がどうなることやら…。
*-*-*
「姉ちゃん!ワンピースどこにしまったの!!」
「あれ洗濯機の中だわ…」
「ひぃ…着る服が…ない…」
「ただ遊びに行くだけならなんだっていいじゃない…」
「違う!ジャンルカとデート!!」
コンコン、とパンプスの踵の音を鳴らして。
今日もひらひらふりふりな身だしなみで街に出掛ける。
待ち合わせまで、あと五分。