ジャンルカに握られた腕が熱い。
振り返るのが怖くて、まるで蛇に睨まれたかのように動けなくなってしまった。グイッとジャンルカがオレの腕を引っ張れば、オレは嫌でもジャンルカの前に引き寄せられる。目が合って、気まずくて、パッと目を反らすとジャンルカが溜め息を漏らした。
気まずい風が流れ込んで。
先に口を開いたのはジャンルカ。
「何で逃げるんだよ」
「逃げてない」
「大事な話するときは目を見ろって言ってるだろ!!」
「オレに構うな!!意味わかんねぇよ、本当に、意味、わかん…ね、っ」
「っ!」
泣いたのはいつぶりだろう。サッカーの試合で負けた時、姉ちゃんと喧嘩して酷い目に合わされた時、…どれも大分前の話だけど。
目を閉じればポロッと一粒の涙が落ちて、地面の色を小さく変える。
「マルコ、あの、」
「……ごめん…、オレ、思ってたよりお前の事、好きみたい、」
「、え」
「嫌だよな…オレ可愛い女の子じゃ、ないし…男、だし…」
「………」
わからなかった。心の隅っこでジャンルカに対する愛が誇大していたなんて。気付かなかった、違う、怖くて気付こうとしなかった。
ジャンルカの手が、涙で濡れた頬を撫でて、それだけで心臓が煩い。
「可愛い女の子じゃなくても…オレは…」
「…ジャンルカ…」
「前に一度だけ、オルマはどことなくマルコに似ているなぁと思った事があった。それ以来オルマの事を考えると同時にお前の事も考えてた」
「…えっ…」
「あまり深くは考えなかったけど…、まあなんだ、つまりは」
ジャンルカの顔が少し赤い。
オレは無意識にその赤い頬に唇を押し当てた。
発言も行動もムチャクチャだな、オレ。それだけ焦ってる証拠。
「…何してんだよ」
「え、ほっぺにちゅ、うっ!?」
耳元で、ジャンルカが、好きって呟いて。前のキスよりもっともっと深い。
心がくっついたような気分だった。