(う、うそだろ…オイ…)


開いた口が塞がらない。塞がるはずもない。一瞬の出来事だったけれど鮮明に記憶してしまった出来事。
何て言えば、どういう反応をすれば。
オレの好きとジャンルカの好きは違う。違うのに何故こうなったのか。


「………」


それ以降、ジャンルカと交わす言葉が見つからなくてずっと黙ったままだった。最後に振り絞るように出した一言…さよなら。ジャンルカは申し訳なさそうにまたな、と言う。


(なんで、なんでなんでなんで?)


人差し指で自分の唇をなぞりつつ、先程の出来事について深く考える。
このままではジャンルカに食われてしまうのではないか、そう考えると貞操のためにも正体をバラした方が良いのかもしれない。しかしバラしたとしても本来の姿でジャンルカと会うのが辛くなるとチームにも少なからず影響は出るだろう。


「このままじゃダメだよな…でも、本当の事を言って嫌われたりしたら…」


真っ直ぐ家には帰宅せずに小さな公園のブランコに座って、ユラユラと揺れながら考えていた。赤く染まる夕日が、だんだん暗くなる頃。


(嫌、じゃなかったんだよな…なんでか知らないけど)


はあ、と一つ溜め息を吐くとタイミングよく携帯が鳴った。
メールの差出人は姉、件名は大変、とかかれている。気になってボタンをカチカチと押せば、目玉が抜け落ちてしまいそうな内容。


"さっき私の携帯にジャンルカくんからメール入ってたけどあんたキスされたんだって!?今どこにいるの?早く帰ってきて話聞かせて!"


正直、姉のメールよりもジャンルカのメールが気になって仕方がなかった。
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