マルコにはいつもお前の態度はあからさまと指摘を受けていた。言われてみればそうかもしれない、オレは顔よりも態度に出やすいタイプだから。
―フィディオのことは好きじゃない。―
心はそう言っているのに体はフィディオを求めている。そうやって矛盾している自分が嫌になって、からにこもるような感じに病んでしまって。
「なあ、ジャンルカは何でフィディオ、なの」
そんなこと言われても自分でもわからないことなのに答えられるはずもなく、ただ黙り、遠くを見る。マルコの声も右から左へ、と、そんな感じだった。
「ねえジャンルカ…ねえってば!!」
「…すまない、一人にしてくれ…」
マルコから離れて一人、向かう先はサッカーグラウンド。
フィディオがこの時間帯はいつも一人で練習をしていることは知っていた。だからといって訪れたのでもなくただふらふらと本能に導かれただけ。
「やあ、キミが来るなんて珍しいね」
ニッコリと笑ってベンチに駆け寄るフィディオ。タオルで汗を拭いドリンクをごくりと飲む。何から何まで、ずっと見ていた。
「そんなに見つめられると恥ずかしいだろ」
「…あ、…っ」
「ジャンルカって素直じゃないよね…」
オレの肩に付いて跳ね上がっている毛先に指を絡めて今度はうっすらと笑う。まるで全てを見透かされたかのような心境。
「オレが欲しくなった?」
「違う…」
「じゃあどうして?」
「………」
言えない。答えが見つからないからいつまでたっても言えないその言葉。
息も唾も一緒に飲み込んで、苦しかった。
「ジャンルカ、」
「フィディ…、っ」
「キスしてあげるよ」
ふわりとフィディオの匂いに包まれて、唇には生暖かくて柔らかいモノが重なった。
この胸の中を渦巻く靄が、たった一回のキスによって消えるだなんて。
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もどかしいジャンルカ