「ごめんね、待った?」

「ちょっとだけだから気にするな」


日曜日。
いい天気で気温も丁度良くて最高なお出かけ日和。
いつもと違うジャンルカに一瞬だけドキリっと心臓が跳ねる。そういえばジャンルカの私服をあまり見たことがないので新鮮な気分。
スッと差し出された手。ああ、手を繋ごうってワケね。
オレは無言でジャンルカの手を握る。何だか変な感じ。


「ゴンドラ、乗る?」

「漕いでくれるの?」

「特別にな」


そうだ、こいつ休日はいつもゴンドラ漕いでたんだっけ。
実を言うとオレはちょっとゴンドラが苦手、というか、川が、苦手で。前にゴンドラに乗せてやるって誘われたけど潔く断ったことがあったっけ。
ジャンルカに支えられてゴンドラに乗ると、グラグラと舟が揺れる。無意識のうちにジャンルカの服の裾をぎゅっと掴んでいた。


「ゴンドラ初めて?」

「うん…まあ、」

「そうか…」


ゆっくりと水面を移動する舟。とりあえずオレは身動きが出来なくて、ただゴンドラを漕いでいるジャンルカを見つめていた。

練習中とは違って、大人っぽいような。たまに振り返っては薄く笑ってまた前を向いたり。

とくとく。
鼓動が早い。


「オルマ、あの」

「?」

「前にも言ったと思うけど、オレはオルマが好きだから」

「うん…私もジャンルカが…―」


好き、なのかな。
まだ答えは見つかっていないけれど、やっぱりジャンルカの真剣な眼差しを見ると気持ちが揺らぐ。


「好きだ…」

「ジャンルカ、ちょ…んっ!」


ゆらゆらと揺れるゴンドラの上で、オレはジャンルカにキスをされた。
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