(また、連絡するから!)
ジャンルカと別れた後、すごい勢いで自宅への帰路を走った。靴が脱げて、最終的には裸足で走ってたっけ。
家に帰るとまっすぐに姉ちゃんの部屋に向かう。靴は玄関にポイ捨て、カバンは靴箱の上に放置、階段も乱暴に駆け上がり姉ちゃんの部屋をノック無しで開けた。
「…あんたねぇ、レディーの部屋はノックしろって何回言わせたら気が済むのよ」
「姉ちゃん助けて!オレ、ジャンルカが、携帯、姉ちゃんの、ジャンルカと、連絡先、っ」
「落ち着いて文章整えてから喋りなさい!」
急いで走ってきたせいで息切れ。はあはあと荒く呼吸を繰り返しながら姉ちゃんに事情を話す。
「ふーん。ジャンルカくんがねー…」
「こんなこと初めてで、ましてやチームメイトだったし…それよりもあいつかなり本気っぽかったから…仕方なく…」
「まあいいわ。事情はわかったし、とりあえずジャンルカくんから連絡が来たらあんたにこれ渡すから」
ストラップの輪っかに指を通してクルクルと携帯を回す姉ちゃん。するとブルブルと携帯が鳴った。
…ジャンルカだ。
「"今日はありがとう。今度はゆっくり、もっと話がしたいから、迷惑でなければまた会ってもらえるかな?"だって。どうすんの?ジャンルカくん本気じゃない」
「どうするって言われても…わかんないし…」
「私が返事してあげようか?」
「っ!それはいい!自分でするから貸して!!」
姉ちゃんから携帯を奪い取って、送られてきた文章と数分にらめっこ。しかし返事の内容もロクに思いつかずで指が動かない。
普段なら他愛ないメールですぐに返せていたのに。
「……よし、これでいい!」
「なんて返事したの?」
「…秘密」
「まあ私の携帯だから見れるんだけどねーって送信メール消したわね…」
"そう言ってもらえて嬉しい!私で良ければいつだって話相手になるわ!"
なんて送った自分はバカだと思った。それと同時にジャンルカに罪悪感が湧いた。
でも悪いのはオレじゃなくて、気付かない鈍感なジャンルカだと言い聞かせて、少し窮屈なワンピースを脱ぎ捨てた。