ジャンルカって普段はポーカーフェイスというか、あまり表情を表に出さない。そのおかげで気持ちのすれ違いが多かったりもするんだけど。体調が悪い時や精神が不安定な時は表情がころころ変わる。おかしな奴だ。
誰よりも負けず嫌いで対抗心が強い。ジャンルカはいつもフィディオの背中を追いかけてる。いつかフィディオと並びたい。初めはそう言ってたのに、月日が流れると次はフィディオを越えたい、そう言い出した。
でもジャンルカの実力じゃあフィディオにかなうはずもなく、それでももがいてもがいて頑張ってた。そんなジャンルカをただ見てただけで。何もしてあげられない、というより手助けしない方がジャンルカのためだと思った。
「っなんで、なんでなんだよ!」
「ジャンルカ…もう暗いし宿舎に…」
「オレのことはいいから、先に帰ってて」
「………」
ジャンルカがフィディオに対して対抗心を剥き出しにしてから、いつも夜までグラウンドで練習をしていた。苛々しているのか、どこかしら力任せで、乱暴で。
「…何だよ…用がないならさっさと、」
「ジャンルカのそんな顔、初めて見た」
「………ふん」
額を滑る汗を拭ってそっぽを向く。些細な仕草がやけに可愛く思えて、体は無意識にジャンルカに近づいている。ジャンルカの方が少し身長が高いから見上げる形になるけれど、ジャンルカの顔を覗き込む。
「ジャンルカの怒った顔、かわいいね」
「な、なに、を」
「照れてる?照れてる顔もかわいい!」
フィディオを越えなくたっていいよ。ジャンルカはジャンルカらしいサッカーをすればいいんだ。
ちょっとからかえば顔をほんのり赤くして照れる。それも、これもあれも全部かわいい。
気づかないうちに、こんなにもジャンルカのことが好きになっていて、…ちょっとだけフィディオに嫉妬していたなんて…―